【労基法上の規制はない】
労働基準法は、割増賃金の算定方法については厳格に規定していますが、欠勤控除については特に規定していません。日割計算において、一般に貴社のように「年間平均の 1 カ月あたり所定労働日数」を採用する事業所が圧倒的に多いのですが、これは割増賃金算定方法に準じた取扱いですし、妥当です。即ち、貴社の計算方法が労働基準法違反というわけでもありませんし、これに代わる「正しい方法」が存在するわけでもありません。しかし…。
【欠勤控除と出勤日数】
貴社の本件 A 月と B 月が、仮に出勤 1 日ずつだったらどうなったでしょうか。貴社の計算方法では、A 月は 1 日出勤したのに総支給 0 円、B 月は 1 日しか出勤していないのに総支給 4 万 8000 円になってしまいます。どう考えてもおかしいですよね。特に A月は、最低賃金を下回るどころか、働いた日があるのに給与ゼロですから、大問題になりそうです。
問題は、「欠勤控除」として控除することだけに着目し、出勤日数を考慮しない運用をしていることにあります。しかし貴社は、出勤 0 日の場合だけは、出勤日数を考慮して所定労働日数と無関係に総支給 0 円としています。これでいいのです。ここに、運用改善の鍵がありそうです。
【運用ルールを定める】
毎月の所定労働日数が異なるのに、何日欠勤したか「だけ」で給与計算することから、問題が生じています。「何日出勤したか」という部分も考慮できる制度とすることで、運用を改善できます。
たとえば、1 カ月の出勤日数が 10 日以下のときは「欠勤控除」という考え方をせず、「出勤日の給与を支給」という取扱いをすることが考えられます。こうすれば、貴社の A 月・B 月のいずれであっても、2 日出勤だから 2 日分支給で各 2 万 4000 円と同額になります。「10 日以下」を例としたのは、貴社の年間平均 1 カ月あたり所定労働日数である 21 日の半分くらいを意識してそうしたものです。別に他の日数としても構いません。大切なことは、定めた日数で例外なく運用することです。
今回は、B 月 2.4 万円に加えて、1.2 万円払い済みの A 月の差額 1.2 万円を前月支給漏れ分として上乗せ支給されるのが良いでしょう。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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