【最低賃金の適用】
地域別最低賃金の大原則は、事業所所在地に適用される最低賃金です。貴社の場合、熊本県最低賃金が適用されます。従いまして、福岡県大牟田市に居住する者を雇用した場合でも、熊本県最低賃金で考えていただいて構いません。
ところで熊本県最低賃金 952 円に対し、福岡県最低賃金は 992 円と 40 円も差があります。荒尾市民は、少し通勤距離が長くなるかもしれませんが、すぐ隣の大牟田市の事業所でアルバイトした方が、「稼げる」わけです。人材確保の観点からは、経営上厳しいかもしれませんが、福岡県最低賃金を意識して時給を決めることができれば採用に少し良い影響があるかもしれません。
一方で、もしかしたら貴社に清掃業務を発注する事業者等が、熊本県最低賃金を基礎とする価格優位性に魅力を感じているのであれば、なかなか難しいのかもしれません。それでも今後の人口減少問題等を考えると、やはり価格転嫁して適正な利益を確保できることを目指していただくのが良いように思います。
【月給換算】
最低賃金制度は、時給の方だけに適用されるわけではありません。月給者に対しても、当然に適用されます。
月 170 時間で計算しますと、熊本県最低賃金 952 円× 170 時間= 16 万 1840 円となります。従って、10 月以降は月給 16 万円では最低賃金法違反となってしまいます。
また、アルバイト時給をいくらに設定するかという点も考慮する必要がありそうです。これまでも最低賃金 898 円に対して 900 円と設定されていましたので、もしかしたら最低賃金 952 円に対して 960 円とされるかもしれません。この場合は、960 円× 170時間= 16 万 3200 円となりますから、少なくともこの額以上でなければアルバイトから正社員になって「時間単価が下がる」ということになってしまいます。
【今後の予測】
政府は、2030 年代半ばまでに、最低賃金 1500 円とすることを明言しています。ざっくり考えて、今後 10 年間で 500 円アップくらいの勢いです。単純に年平均 50 円増で 10 年後達成できますし、実際に今年は 50 円以上のアップでした。
最低賃金 1500 円とは、月 170 時間で計算すると月給 25 万 5000 円です。10 年後は、「月給 25 万円=最低賃金法違反」という時代になっている可能性が高いのです。そして事業所は、このことを意識して賃金設計していく必要があるわけです。既に価格転嫁や賃上げについて少し記しましたが、現在の価格を維持していくことは、今後の最低賃金の問題だけでも不可能な状況にあると断言できる状態だと思われます。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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