【現在規程】
業務上必要な経費は、事業所が負担しなければなりません。その経費は、原則的には実費負担のはずですが、旅費日当規程を定めて一定の運用基準を設ける事業所が少なくありません。貴社も、そのようです。
お聞きしたところ、問題は宿泊費等が高騰していることであって、貴社の旅費日当規程に大きな問題があるわけではないようです。強いて言えば、固定額で支給する建前の宿泊費が、実質的に実費支給となっていることでしょうか。規定自体を固定額ではなく実費支給を原則とすることに変更した方が良いのかもしれません。
【改正旅費法】
ところで、国家公務員の旅費等に関する事項は、法律で定められています。「旅費法」です。この旅費法が改正され、令和7 年4 月1 日から施行されました。民間企業と直接関係はないのですが、国の制度を参考に規程を定めているケースも少なくありません。貴社の旅費日当規程の見直しの参考になるかもしれませんね。大まかな改正ポイントを紹介したいと思います。
@宿泊費:定額支給⇒上限付き実費支給
貴社と同様に固定額を支給していましたが、実費支給に切り替えられました。注目したい点は、「上限付き」です。この上限額は、地域や職員等級等によって異なるようです。またパック旅行を利用した場合に、「包括宿泊費」という概念も追加され、交通費+宿泊費の範囲内で利用できるようです。早めに予定が決まれば、経費削減のためパック旅行活用は有効だと思います。
A日当:日帰日当を廃止、宿泊日当⇒宿泊手当へ
大きな改正点として、日帰日当が廃止されました。昼食代は、通常勤務でも食べるものだという考え方のようです。それなら朝食や夕食もそうではないかと思うのですが、通常勤務なら自宅で食べるところ、外食費がかかるという発想なのでしょう。宿泊手当と名称を変えて存続です。
【改正法を参考に】
改正旅費法を参考にするならば、宿泊費は実費支給としつつ、上限額を設定しておくことが考えられます。上限額を超える宿泊施設しか泊まれない場合等は、その都度個別申請で超過額を実費支給となります(現在の実態に近いですね)。従業員には、可能な限り安く宿泊する努力をお願いしたいですね。
もう一点、改正旅費法を参考にするならば、日帰日当の廃止が考えられます。中小企業の場合、役員の出張が多い場合は、税務対策という視点で日帰日当を設定しているケースも少なくありません。そうであれば、廃止は難しいですね。
仮に廃止方向で検討する場合でも、全廃ではなく、たとえば早朝から夜遅くまで時間を要する日帰出張のようなケースは支給対象とすることも考えられますね。
貴社の場合、経費が膨らんでいることを問題視されています。順当に考えれば、日帰日当は廃止又は縮小でしょうね。また、宿泊日当についても、宿泊施設での朝食の有無等を考慮すべきかもしれません。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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