【追加された条文】
当社は、製造業を営む株式会社です。ゴールデンウィークを過ぎると、一気に夏が近づいてくるように感じます。例年、夏場は熱中症対策が必要になります。昨年までは、お蔭様で当社では熱中症は発生しませんでした。しかし近年の猛暑は、いつ何が起きてもおかしくない厳しい状況です。当社も熱中症に関しては、しっかりと対応したいと考えています。
さて、熱中症に関して、法改正があったと聞いています。具体的にどのような改正があったのか、事業所は何をしなければならなくなったのか等について、概要を教えてください。
簡単にまとめると、次のようになります。
第1 項【体制整備+周知】「自覚症状がある人」や「熱中症疑いがある人を発見した人」が、会社に報告する体制を整備して、その体制を周知
第2 項【手順作成+周知】「作業からの離脱、身体の冷却、医師の診察・処置等」の手順を定めて、その手順を周知
【背景】
職場における熱中症による死亡者数は、令和4 年〜 6 年の3 年間はいずれも30 人程度でした。しかし、死傷者数では、令和4 年827 人、同5 年1106 人、同6 年1195 人と増加傾向にあります。全体の約4 割が、建設業・製造業で発生しています。
死傷者数とは、死亡及び休業4 日以上の人数です。そのため、労災扱いとなった事案でも休業3 日以内であれば人数に計上されていません。いかに熱中症が多発しているか、よくわかりますね。このような背景から、法改正に至ったと考えられます。
【厚労省資料より】
熱中症に関する法改正にあわせて、厚労省がパンフレット等を作成して公表しています。
条文の「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある
作業」とは、具体的に次の環境・時間が見込まれる作業を対象とするようです。
「WBGT28 度以上」又は「気温31 度以上」の環境下で 「連続1 時間以上」又は「1 日4 時間を超えて実施」が見込まれる作業
WBGT 基準値とは、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う「暑さ指数のことをいいます。測定器が必要になります。「報告する体制の整備」と「対応手順」を定めて周知させるという改正法なので、必ずしも上記の作業環境を超えない場合であっても、熱中症対策として取り組むべきでしょう。
熱中症予防対策としては、@作業環境管理、A作業管理、B健康管理、C労働衛生教育、等が挙げられます。
例年6 月から熱中症の発生が増加傾向を示します(7 〜 8 月が最多)。厚労省作成のパンフレット等に対応例等が挙げられていますので、ぜひ参考にされて下さい。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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