【株主総会の特別決議】
取締役と会社との関係は委任契約なので、どちらか一方からの意思表示で契約を解除することは可能です。
会社の側からすれば「解任」であり、取締役の側からすれば「辞任」ということになります。
会社の方から取締役との委任契約を解除、つまり「解任」する場合には、株主総会を開き、当該取締役を解任する旨の議案が可決されることが必要です。
取締役を解任する場合は、株主総会の普通決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半すうを有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数)が必要です。
なお、取締役の解任については、株主総会の専決事項とされていますので、取締役会や代表取締役など他の機関による解任は認められていません。
【損害賠償請求】
取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までですが、株式の譲渡制限に関する規定がある会社(非公開会社)においては、定款の定めにより最長10年まで伸長可能です。
では、任期を最長10年に伸長している会社の取締役が任期途中の6年目で解任された場合、その取締役は解任によって生じた損害賠償を会社に請求することができるでしょうか。
あと4年は任期が約束されていると思っていた矢先に、会社の都合で突然解任されてしまったのではたまったものではありません。
そこで、会社法上は、任期満了前に解任された取締役は、解任により生じた損害賠償を会社に対して請求出来ることになっています。
この場合は、残り4年間の役員報酬分は少なくとも損害と言えるでしょう。
ただし、会社が当該取締役を解任するについて「正当事由」が存在する場合には、もはやその取締役の利益を守る必要はないため、損害賠償請求は認められません。
正当事由としては、取締役に職務遂行上の法令・定款違反行為があった場合や心身の故障のため職務遂行に支障がある場合などがあります。
大株主の単なる好みによる解任などでは、正当事由とはなりません。
【裁判所による解任】
取締役の職務遂行上、不正行為や法令・定款に違反する重大な事実があるにもかかわらず、株主総会でその取締役の解任決議が否決された時は、6か月前(非公開会社においては所有期間なし)から引き続き発行済み株式総数の100分の3以上にあたる株式を有する株主は、株主総会決議のときから30日以内にその取締役の解任を裁判所に請求することができます。
この規定は、本来であれば解任されるべき不正な職務執行をした取締役であっても、取締役の解任要件である株主総会の普通決議を否決するだけの多数派株主の支持があれば許されてしまう(解任が認められない)可能性があるため、このような多数派の横暴を防止し、少数派株主による解任の機会を与える趣旨で規定されています。
【ご質問への回答】
Dの着服行為は許されるものではありません。
株主総会を招集し、特別決議要件を満たすことで解任可能です。
正当事由も存在しますので、解任後にDからの損害賠償請求が認められることもないでしょう。
仮に、株主総会で解任決議が否決された場合には、発行済み株式の100分の3以上を有する株主(例えばE)から、裁判所にDの解任を請求することも可能です。
回答者 司法書士 安藤 功
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