司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成23年12月号》
株主名簿について
  質 問

【質問者】
 印刷機械販売業 代表取締役 A

【質問内容】
 当社は主に駄菓子やパンのパッケージを印刷する機械の販売を業とする株式会社です。
 約3年前に、個人事業から法人成りしたばかりですが、このたび、取引先である甲社の社長から、株主名簿の閲覧を要求されております。
 甲社には買掛金があるので、債権者には該当するのですが、閲覧の理由については、何度聞いても教えてくれません。
 当社としては、たとえ債権者であっても、株主の個人情報が記載されている株主名簿を、本人の許可もなく勝手に教えることは出来ないと考えております。
 その点、法律ではどうなっているのでしょうか。
 なお、当社の株式については、株券は発行しておりません。

  回 答

【株主名簿とは】
 株主名簿とは、株主の氏名・住所、株主が有する株式数、株式を取得した日、株券を発行しているのであれば株券番号を記載した帳簿のことです。
 株式会社は、株主名簿を作成し、上記事項を記載した上で、本店に備え置かなければいけません。株主や会社の債権者は、会社の営業時間内であれば、いつでも、その請求の理由を明らかにし、株主名簿の閲覧や謄写の請求をできることになっています。
 ただし、株主名簿には、氏名・住所などの個人情報が記載されているため、個人情報を保護する必要もあります。
 以前は、名簿屋が営利目的で株主の個人情報を入手し、悪用する事案が散見されました。
 そこで、平成18年5月の会社法施行に伴い、個人情報保護の観点から、株主名簿の閲覧・謄写の請求を、一定の場合に拒むことが出来るよう明記されました。

【株主名簿の閲覧・謄写の請求の拒否理由】
会社が株主名簿の閲覧・謄写の請求を拒否できる理由としては、以下の事由が挙げられます。
(1) 株主が自己の商品についてのダイレクトメールを送る目的を有するなど、請求者がその権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
(2) 業務妨害の目的で繰り返し株主名簿の閲覧請求をしたりするなど、請求者が株式会社の業務の遂行を妨げ、または株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
(3) 請求者が株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するものであるとき。
(4) いわゆる名簿屋が、株主の氏名・住所などの個人情報を第三者に流出させようとしているなど、請求者が株主名簿の閲覧・謄写によって知り得た事実を、利益を得て第三者に通報するための請求を行ったとき。
(5) 請求者が過去2年以内において、株主名簿の閲覧・謄写によって知り得た事実を、利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

【ご質問への回答】
 今回、甲社は御社に対して売掛金を有しているため債権者には該当します。債権者であれば、請求の理由を明らかにして、株主名簿の閲覧・謄写の請求をすることは可能です。甲社の社長が請求の理由を明らかにしないため、上記(1)から(5)の拒否理由に該当するかしないかの検討をするまでもなく、甲社からの株主名簿の閲覧請求を拒否することが可能です。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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