司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成24年5月号》
取締役の年齢について
  質 問

【質問者】
 株式会社(非公開会社・取締役会設置) 代表取締役A

【質問内容】
 私は、株式会社○△の代表取締役をしております。役員構成は、取締役が私と妻Bと私の父C、監査役として母Dがいます。出資は100パーセント私がしているため、株主は私一人のみです。会社の運営は、私と妻の二人でほとんどをこなしており、両親は名義上の取締役・監査役に過ぎません。現在、当社の取締役の任期は2年、監査役の任期は4年でありますが、来月の定時株主総会の終結時をもって役員全員が任期満了退任することになります。
 そこで、ただ名義上の役員である父と母には役員を降りてもらい、私が引き続き代表取締役、これまで数年間、会社を手伝ってくれている長男(25歳)と、高校を卒業し遊び呆けている次男(18歳・無職)を社会勉強の意味を込めて取締役として選任し、妻を監査役にすることで、新たな体制を!と考えております。このような思いつきで役員を編成して良いのか不安もありますが、業務自体はこれまでと変わらず夫婦が主となって続けていくつもりではいます。何か、お気づきの点がありましたらご教示ください。

  回 答

【取締役の年齢について】
 株式会社の取締役の年齢については、法律上は下限もなければ上限もありません。つまり、個人であれば、成年被後見人や被保佐人でない限り、原則として取締役になることは可能です。厳密に言えば、一定の犯罪を犯し、刑に処せられた者についても取締役の欠格事由に該当するのですが、詳細は割愛します。また、監査役に関しても同じような規定があります。 未成年者は取締役の欠格事由に該当しないため、取締役になることは可能です。ただし、民法上、未成年者の法律行為については、法定代理人の同意が必要とされているため、取締役の就任(会社との委任契約)に関しても親権者の同意が必要となります。

【経営能力との関係】
 既述のとおり、未成年者は取締役の欠格事由に該当しないため、取締役になることは可能ですが、会社を代表する取締役になるには、すべての未成年者が可能であるとはいえません。
 取締役会を設置していない株式会社においては、登記手続き上、取締役に就任する段階で個人の印鑑証明書を添付する必要があります。印鑑登録は15歳未満の人は出来ません。これは、そもそも15歳未満では一人前として評価されていないことが原因だと思われます。よって、取締役会非設置会社においては、印鑑登録ができない15歳未満の未成年者は取締役にすらなることが出来ません。
 一方、取締役会を置く株式会社においては、登記手続き上、取締役の就任段階では印鑑証明書の添付が要求されておらず、代表取締役になる場合のみ印鑑証明書が必要となります。よって、取締役会設置会社においては、15歳未満の未成年者であっても、登記上は取締役になることが可能となります。
 しかし、これは単なる手続き上のことであって、そもそも15歳にも満たない未成年者が会社の経営に対して一定の責任を負う立場につくというのは現実的ではありません。

【ご質問への回答】

 本件の場合、長男を取締役に選任することに関しては何ら問題はありません。ただし、未成年者である次男を社会勉強のためだけに取締役として選任することに関しては疑義があります。御社は取締役会設置会社ですので、未成年者を取締役に選任することについては書面上はそれほど難しくありません。株主もAさん一人ですので、簡単に選任することが出来ます。ただし、今後の経営も実質は夫婦でやっていくというのが前提であれば、取締役会の定めを廃止し、取締役をABとするなど、実態に即したかたちにする方がすっきりするのではないでしょうか。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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