司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成24年6月号》
株券発行会社と株券の廃止について
  質 問

【質問者】
 株式会社(非公開会社・取締役会設置) 代表取締役A

【質問内容】
 私は、平成15年4月に立ち上げた株式会社○△の代表取締役をしております。役員構成は、取締役が私とB、C、監査役としてDがいます。出資は100パーセント私がしているため、株主は私一人のみです。この度、銀行からの借り入れをするにつき、当社の登記簿をとってみたところ、「株券を発行する旨の定め」と題して、「当会者の株式については、株券を発行する。」という登記がいつの間にかされておりました。会社設立当初より株主は私一人ですし、株券なんて大きな会社がやっていることで、うちには関係ないと思っていたため、株券を発行したことなどありません。
 このまま登記簿を銀行に提出してしまうと、実際に発行もしていない株券について提示を求められたりしないか、発行していない場合に何か不利益にならないかなど不安だらけです。何か、対処等ございましたら教示ください。

  回 答

【株券不発行制度】
  少し前の話になりますが、平成18年5月1日より商法から会社法に法律が変わりました。旧商法時代には原則として全ての株式に株券が発行され、その譲渡についても株券の交付を要するのが建前となっておりました。このことに関しては、株券の管理の煩雑さ、株券紛失におけるリスク、株券を発行するにつきコストがかかる等の理由から何かと問題視されていました。そこで、会社法の施行の際に、株券の不発行を原則とし、株券を発行しないことを可能とする改正が行われました。

【旧商法時代の株券の規定】
 旧商法時代では、全ての株式会社が原則として株券を発行している会社として登記されていました。例外的に定款において「株券を発行しない」旨を定めた場合には、株券不発行会社となりました。ただし、譲渡制限規定のある会社においては、株主から株券発行の請求がない場合には、株券を発行しなくても良いという規定があったため、実際には、上場しているような会社を除き、株券を発行しているような例はほとんどありませんでした。

【会社法上の株券の規定】
  平成18年5月1日の会社法の施行より、株券の発行に関して旧商法と原則例外が逆転し、株券不発行が原則で、株券発行は例外的な扱いとなりました。つまり、定款で株券の発行に関して何も定めなかった場合には、自動的に株券不発行会社となり、定款で定めた場合にのみ株券発行会社になります。

【従来より存続している会社の取り扱い】
会社法施行前から存続している株式会社については、会社法施行時に、従前の会社での取り扱いを定めた整備法により、定款に「株券を発行する」旨の定めがあるとみなされるので、旧商法時代に株券を発行しない旨を定款で定めていた場合を除き、会社法施行と同時に自動的に株券発行会社となりました。これらの会社法施行前より存続する会社については、会社法施行時に登記上、法務局の職権により「株券を発行する」旨の登記がなされております。

【ご質問への回答】
 大多数の会社法施行当時より存続している株式会社は、定款を変更して株券不発行会社としない限りは、株券発行義務のある株券発行会社のままとなっています。御社の場合、実態として株券を発行していない会社ですので、登記上の情報と実態とが異なり、このままでは第三者に誤解を生じてしまう恐れがあります。そのようなことのないように、いち早く株券不発行の登記をされることをお勧めいたします。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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