【株券不発行制度】
少し前の話になりますが、平成18年5月1日より商法から会社法に法律が変わりました。旧商法時代には原則として全ての株式に株券が発行され、その譲渡についても株券の交付を要するのが建前となっておりました。このことに関しては、株券の管理の煩雑さ、株券紛失におけるリスク、株券を発行するにつきコストがかかる等の理由から何かと問題視されていました。そこで、会社法の施行の際に、株券の不発行を原則とし、株券を発行しないことを可能とする改正が行われました。
【旧商法時代の株券の規定】
旧商法時代では、全ての株式会社が原則として株券を発行している会社として登記されていました。例外的に定款において「株券を発行しない」旨を定めた場合には、株券不発行会社となりました。ただし、譲渡制限規定のある会社においては、株主から株券発行の請求がない場合には、株券を発行しなくても良いという規定があったため、実際には、上場しているような会社を除き、株券を発行しているような例はほとんどありませんでした。
【会社法上の株券の規定】
平成18年5月1日の会社法の施行より、株券の発行に関して旧商法と原則例外が逆転し、株券不発行が原則で、株券発行は例外的な扱いとなりました。つまり、定款で株券の発行に関して何も定めなかった場合には、自動的に株券不発行会社となり、定款で定めた場合にのみ株券発行会社になります。
【従来より存続している会社の取り扱い】
会社法施行前から存続している株式会社については、会社法施行時に、従前の会社での取り扱いを定めた整備法により、定款に「株券を発行する」旨の定めがあるとみなされるので、旧商法時代に株券を発行しない旨を定款で定めていた場合を除き、会社法施行と同時に自動的に株券発行会社となりました。これらの会社法施行前より存続する会社については、会社法施行時に登記上、法務局の職権により「株券を発行する」旨の登記がなされております。
【ご質問への回答】
大多数の会社法施行当時より存続している株式会社は、定款を変更して株券不発行会社としない限りは、株券発行義務のある株券発行会社のままとなっています。御社の場合、実態として株券を発行していない会社ですので、登記上の情報と実態とが異なり、このままでは第三者に誤解を生じてしまう恐れがあります。そのようなことのないように、いち早く株券不発行の登記をされることをお勧めいたします。
回答者 司法書士 安藤 功
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