司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成24年7月号》
利益相反取引について
  質 問

【質問者】
 株式会社 取締役A

【質問内容】
 私は、当社の取締役として3年前に就任しました。当社は不動産業を営んでおり、将来的に分譲するための土地を多く仕入れ、整地ができ次第、一般向けに売り出しています。今回、私の実家近くの当社所有物件を数区画売りに出すこととなりました。実家近くの便利の良い場所であり、これなら両親と同居とまではいかずとも、近くに居れば安心と考え、当社の土地を購入し家を建てることを決意しました。社長にその旨相談したところ、利益相反取引に該当するのではないかとの指摘を受けましたが、何のことだか分かりません。
 せっかく良い土地が見つかったので、できる事なら当該土地を購入したいですし、仮に利益相反取引というものに該当するとしても、何とかして購入できる方法はないのかを教えていただけないでしょうか。

  回 答

【制度の概要】
 利益相反取引とは、取締役が会社の利益を犠牲にして、自己または第三者の利益を図るような取引のことを言います。取締役が利益相反取引を行う場合には、事前に会社に対してその取引についての承認を受けなければなりません。
 取締役が利益を得ることで、会社が損害を被るような場合が想定しやすいかもしれません。利益相反取引には大きくわけて、直接取引と間接取引に分けられます。

【直接取引】
 直接取引とは、取締役が自己または第三者のために株式会社と取引をしようとする場合と定義されています。具体例としては、
(1) 取締役と会社間で行われる売買契約
(2) 会社から取締役への贈与
(3) 取締役から会社への利息付金銭貸付
(4) 会社から取締役への債務免除
 などが考えられます。

【間接取引】
 間接取引とは、株式会社が取締役の債務を保証すること、その他取締役以外の者との間において株式会社とその取締役との利益が相反する取引をしようとする場合と定義されています。具体例としては
(1) 取締役と第三者間の債務を会社が保証する契約
(2) 会社が第三社とする取締役の債務を引き受ける契約
(3) 会社が不動産に取締役を債務者とする抵当権を設定する契約
などが考えられます。直接取引に比べると、間接取引の方が利益相反に該当するかどうかの判断は難しいものと思われます。  

【承認の方法】
 利益相反取引に該当する場合、会社の承認を得る必要があります。承認機関は、取締役会非設置会社については株主総会に、取締役会設置会社については取締役会において当該取引の重要な事項を報告して、承認を受けなければなりません。当該承認をうけずに行った利益相反取引は、直接取引か間接取引かにかかわらず、無効とされております。

【ご質問への回答】
 御社が取締役会設置会社か非設置会社かは分かりませんが、会社所有の不動産につき取締役と売買契約をすることは明らかに直接取引に該当するため、しかるべき機関の承認を受ける必要があります。今回は比較的分かりやすい事例でしたが、利益相反取引に該当するかどうかの判断に迷ったら、早めに専門家に相談し、せっかくの取引が無効なものとならないよう注意する必要があります。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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