【LLPとは】
有限責任事業組合(LLP)は、約7年前の平成17年8月に施行された新しい企業形態です。LLPに出資をする人を「組合員」と呼び、株式会社における株主のようなものです。組合である以上は、共同事業性が要求され、最低でも2人以上の出資者が必要となります。
平成18年5月に会社法が施行されるまでの会社組織は、株式会社、有限会社、合名会社、合資会社の4種類が活用されてきました。特に株式会社と有限会社の設立件数は合名会社、合資会社に比べ圧倒的に多く活用されてきました。
では、合名会社や合資会社の設立件数が少なかったのでしょう。これは、出資者の責任が無限責任であることが原因です。合名会社の社員(出資者)は全員が、合資会社の社員は最低でも1人以上は無限責任社員でなければならず、会社が対外的に損害賠償責任を負った場合等に、自己の財産を処分してまでも責任を負わなければならないような非常にリスクの高い立場におかれることになります。
LLPは「組合」であるため、株式会社等の法人組織と違い、組織作り、運営、利益配分等を契約で自由に決めることができます。また、組合員が「有限」責任であるため、合名・合資会社の社員のように無限の責任を追求されることもなく損失リスクを軽減でき、起業しやすいのが特徴です。
【メリット】
(1) 有限責任制
上記のとおり、LLPの組合員は、出資をした限度内でのみしか責任を負いません。これは、合名会社や合同会社における無限責任制との比較となります。
(2) 内部自治の原則
例えば、株式会社においては、持ち株数に応じて票数が決まるため、多く出資をした株主にはそれだけの発言権が与えられます。発言権に限らず、利益配当においても同様に、多く出資をした株主が多く利益配当を受けることになります。
LLPであれば、誰がいくら出資をしているかに関係なく、発言権は平等ですし、利益配当率に関しては自由に決めることができます。株式会社と比較して、自由なルール設計ができ、非常に使い勝手が良い事業体であるといえます。
(3) 構成員課税(パススルー課税)
株式会社のような法人格を有する組織は、組織であげた利益に対して、まず法人税が課されます。その後、その利益の分配を受けた構成員(株主)に対して更に税金が課されます。日本の税法上、この二重課税を避けるためには法人格を有してはいけないのです。法人格のない事業形態としては、民法上の組合がありますが、民法上の組合における組合員は無限責任を負わなければなりません。
そこで、LLPはパススルー課税を採用し、構成員に直接課税するのみで、法人税は課されないようにしました。これによって、法人税を課されることなく、二重課税を受けないメリットがあります。
【ご質問への回答】
企業形態をどのようなものにするのかにつき、上記のようなメリットを検討したうえでLLPが適しているのかどうか判断すべきです。LLPはメリットばかりではなく、知名度の低さゆえに信用力に影響はないかや、財産の帰属主体になれないことによるデメリット等もしっかり検討しなければなりません。LLPは産学連携やベンチャー企業を起業する場合等に検討されることが多いようです。また、共同事業性も要求されますので、貴殿の今後の方針としては、LLPを立ち上げるよりも株式会社を設立するのが一般的なのかもしれませんね。
回答者 司法書士 安藤 功
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