【法律の変遷】
株式会社の監査役の任期については、法律に定めがあります。御社の設立時期は平成10年頃ですので、監査役の任期に関しての定めは商法に規定されていましたが、平成13年改正商法が平成14年5月に施行され、更に平成18年5月に会社法が施行されたことにより、その都度、監査役の任期が変更されていきました。したがって、旧商法・平成13年改正商法・会社法を理解することで、監査役の任期に関しての変遷が分かります。以下、上記3つの法律に関して説明いたします。
【旧商法】
平成13年改正商法よりも前にいる監査役の任期は、「就任後3年内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時迄」とされていました。また、会社設立時の最初の監査役としては、「就任後1年内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時迄」とされておりました。
【平成13年改正商法】
この改正により、監査役の任期が、「就任後4年内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時迄」と1年伸長されました。ただし、改正当時既に監査役として登記されている者の任期に関しては、3年なのか4年なのか判断しづらいため、以下のような措置がとられました。
監査役の任期に関する経過措置
この法律の施行の際現に存する株式会社の監査役でこの法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結前に在任するものの任期に関しては、この法律の施行後も、なお従前の例による。
上記によれば、平成14年5月に商法が改正されたからといっても、現任する監査役に関しては、従前とおり3年の任期になり、その後、再選されればそこから4年の任期となるのです。なお、会社設立時の最初の監査役に関しては、旧商法の規定がそのまま残ったため、任期は1年ということになります。
【会社法】
平成18年5月に会社法が施行されました。これまで、株式会社において監査役は必須の機関でしたが、会社法になってからは監査役がいない株式会社も存在することになりました。任期に関しては、原則として平成13年改正商法と同じく4年の任期ですが、途中であっても監査役を置く旨の定款の定めを廃止した時や株式の譲渡制限規定を廃止する定款変更の決議をした時など、監査役の任期が満了するケースがあります。また、株式の譲渡制限規定を置いている会社に関しては、監査役の任期を10年まで伸長することも可能となりました。
【ご質問への回答】
監査役の任期に関しては、取締役の任期に比べ管理が難しいところです。法律の改正により、その時現存している監査役及びその後に選任された監査役の任期を計算する上で、何年の任期なのかを迷うこともあるでしょう。改正後、4年となったものと勘違いして登記をしたら、本当は3年だったので1年遅れてしまったことの過料の制裁を受けてしまった会社もあることでしょう。また、任期を10年に伸長したことで経費削減にはなるかもしれませんが、任期途中で解任してしまった場合の損害賠償の問題や具体的な任期を忘れてしまって登記申請を怠ってしまうリスクも考えられます。過料等の無駄な出費を抑えるためにも任期管理はしっかりとしておきたいものです。
回答者 司法書士 安藤 功
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