司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成24年11月号》
通常清算、特別清算と破産について
  質 問

【質問者】  A

【質問内容】
 当社は創業より80年続く地場ではそれなりに歴史のある蒲鉾屋(株式会社)です。祖父が創業してから私が3代目の社長をしておりますが、近年、不況のあおりを受け、当社の経営としましては、従業員への給料を支払うために借入れをしなければならない位に逼迫しており、取引先へも買掛金がある状況であり、このまま会社を継続しても借金が増えていく一方です。会社をたたんで、清算手続きを行おうと考えておりますが、借金が残るため通常の清算手続きではなく、破産か特別清算の手続きをする必要があると聞きました。法的に問題がないようにしていきたいのですが、手続きをする上で、通常清算と特別清算、破産の相違について教えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。

  回 答

【通常清算】
 株式会社が解散した場合、清算人が選任され、その会社に対して債権を有している債権者に対して、どのような内容の債権がいくらあるのかを申し出るように官報にて公告し、かつ、知れたる債権者には個別に催告をすることになります。官報公告期間は、清算人が就任してから2ヶ月以上の間に少なくとも1回必要であるとされています。
 清算人は、会社に財産があれば換価処分し、売掛金等の債権を取り立て、買掛金等の債務を弁済し、その後に残余財産があれば株主へ分配することで清算事務を終了し、遅滞なく決算報告書を作成の上、株主総会での承認を得て、清算結了に至ります。以上の手続きが、おおまかな通常清算手続きの流れとなります。

【特別清算】
 特別清算とは、解散会社が資金繰りに行き詰ったり、債務超過(清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りない状態)の疑いが生じた場合に、裁判所の監督下のもと、会社を清算する手続きです。裁判所が関与する点や会社の財産を換価し、その代金によって債務を支払い、残りの負債は協定案に沿って返済していく点などで、通常清算とは異なります。
 特別清算の簡単な流れとしては、特別清算の申立後に清算人が協定案を作成し、債権者集会において出席債権者の過半数、かつ、総債権額の3分の2以上の同意を得て協定案が可決され、可決された協定案に従って弁済を行っていきます。

【親会社が子会社を清算する場合に用いる特別清算手続】
 特別清算手続きは、上記のとおり債権者の一定数の同意の下に裁判所が協定案を可決することから、場合によっては協定案が否決され、特別清算手続きを選択できないこともありえます。
 あるグループ企業の子会社を清算させたい場合に、取引先等への債務を負ったままの状態で特別清算手続きをとれば、そのグループ全体の信用を損ないかねません。そこで、このようなデメリットを解消するために以下のような流れで特別清算手続きを進めていく事があります。
 まず、子会社が負っている負債を全額親会社が支払います。すると、子会社の債権者は親会社のみとなります。これで、子会社の解散、特別清算申立、協定案の作成、債権者集会における決議もすべて簡易迅速になされ、子会社が倒産したことによるグループ全体のイメージも害することなく清算が可能となります。

【破産】
 破産は現金化できる資産は全て換価した上で借金の返済に充て、それでも支払不能又は債務超過である場合に裁判所を通してなされる手続きです。裁判所の関与がある点で特別清算と類似しますが、破産の方が特別清算に比べて厳格な手続きとなります。また、破産手続きは個人・法人どちらもあり得ますが、特別清算は株式会社に限られます。
 対外的イメージを気にしてしまい破産を避ける傾向もあり、そのような場合、上記のような特別清算を選択するケースもあります。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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