司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成24年12月号》
企業形態の選択について
  質 問

【質問者】  A

【質問内容】
 私は、今年大学を卒業したら、これまでのサークル活動での経験を活かして企画関連の分野で起業しようと考えています。一度は社会に出て、世の中の事をもっと勉強してから起業した方が良いのかもしれませんが、考えるところもあり起業を選択しました。とはいえ、どのように会社を作るのか、また、会社の形態には色んな形態があると聞いております。個人事業が良いのか、株式会社など法人を作って運営していくのが良いのかなど、どのような点に注意して検討していくべきでしょうか。

  回 答

【はじめに】
 事業を始める際に、自らが取引行為の帰属の主体となって経済活動を行う個人事業形態を採用するという選択肢がありえる一方で、株式会社や合同会社などの会社形態を選択する方法もあります。こらら色々な企業形態が存在する中で、自身が興す事業をどのような企業形態にするのかはとても重要なことです。
 ここでは、実際に多く採用されている株式会社をベースに、近年、ベンチャー企業が採用するケースが増えてきている合同会社を中心に比較をしながら、企業形態の選択に当たり、考慮すべき点をいくつか説明します。

【責任面において】
 その事業を行うことにより発生する責任を誰がどれだけ負うのかという点に着目した場合、個人事業の場合は、その事業を行う個人が全ての責任を負うことになります。株式会社や合同会社の場合は、出資者は有限責任を負うにとどまりますので、いわば出資者の責任が限定されており一般的には望ましいと考えられます。

【税務面において】
 企業形態によって課税の規律は異なりますので、同じ事業を行い同じだけ利益が出たとしても、その事業をどの企業形態を選択して行ったかによって、税負担に違いが生じてきます。これは、自身が行おうとする事業の規模、内容、特性等によって、しっかりした判断が必要です。ここはかなり重要な要素ですので、企業形態の選択においては、税の専門家にしっかり相談して進めていくべきでしょう。

【信用面について】
 事業のための各取引を行うにつき、一般的に取引先は相手方が個人であるよりは法人であることのほうが望ましいと思っているケースが多いようです。もちろん、業種によっては相手が個人であろうが法人であろうが全く関係ないという取引先もあります。株式会社や合同会社だからといって、社会的信用力が必ずしもあるとは限りませんが、取引を円滑に行うためにあえて法人を選択するケースもあります。

【設立時およびその後のコスト】
 法人形態を選択する場合、登記をしなければならず、登記のためにはそれなりに費用がかかります。また、会社を存続していくためには、株式会社であれば決算公告を毎年していかなくてはいけないことになっており、維持していくための費用もかかります。企業形態を選択する上では、起業時とそのランニングコスト等もしっかり考慮する必要があります。
 企業形態を選択するには上記のような点は最低限検討していく必要があります。この他にも、事業を大きくしていくために投資家が資金を投入しやすいようにどのような企業形態を選択するべきかなどの資金調達面に着目したり、事業活動で得られた利益をどのように分配していくかに着目して企業形態を選択していくことになります。いづれにしても、専門家の知識なしには判断に迷うところですので、しっかりと相談されることをお勧めいたします。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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