司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成25年4月号》
残余財産の分配に関する種類株式について

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 前回は、種類株式についてのうち、剰余金の配当に関する種類株式について説明させていただきました。
 今回は、残余財産の分配に関する種類株式について説明させていただきます。
 会社が解散して清算をする場合、まずは解散までのところで残っている債務(借金)に関しては支払いを済ませ、未収金等があれば回収をするという清算期間に入ります。
 上記の全てが完了して、なお財産が残っている場合は、株主が分配を受けることになります。通常は、残余財産の分配に関しては株主平等の原則に従って、株主に対して均等に残余財産が分配されることになりますが、残余財産の分配に関する種類株式を発行することによって、普通株式に優先する株式もしくは劣後する株式とすることが可能となります。
 実務的には、前回ご紹介しました剰余金配当優先株式の場合と同様に、出資者に対してのインセンティブを与える目的で、残余財産についても他の株式に先立って払込金額相当額だけ残余財産の分配を受ける権利を有する旨を定めることが一般に行われています。
 なお、残余財産の分配についても剰余金の配当に関する種類株式と同様に参加型と非参加型があります。

【みなし清算条項の可否】
   清算の場合に限られず、会社が第三者に買収される際に組織再編の形式がとられる場合、たとえば第三者と合併し、合併によって消滅する会社の株主には第三者である存続会社の株式が割り当てられる場合に、残余財産分配優先額に相当する(当該第三者である)存続会社の株式等の対価が優先株主に対し優先的に割り当てられるとすることはできないでしょうか。
 まず、一般的には、合併が残余財産分配に該当すると解釈することはできないとして、残余財産の分配に関する条項で対応することは難しいと考えられています。
 したがって、これまでの実務では、会社に対して出資をしようとする者は、発行会社またはその株主との間で、合併新株の交付等について優先的取扱いがなされることを、契約で規定して対処するにとどまってきました。しかし、その契約の有効性等に関しての訴訟リスクを考えると、発行会社の株主全員の同意がなければ実効性に欠けるものとなります。
 他方、会社法は、合併で消滅する会社が種類株式を発行している場合には、合併契約において、消滅会社の株主に対する株式等対価の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うことを明確に認めているため、こちらで対応することになるものと思われます。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
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