司法書士のつぶやき

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成25年8月号》
取得条項付種類株式について

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 前回は、種類株式についてのうち、取得請求権付種類株式について説明させていただきました。
 今回は、取得請求権付種類株式と名前が良く似ている取得条項付種類株式について説明をさせていただきます。

 前回ご説明しました取得請求権付株式は、株主が会社に対して自分の株式を取得するよう請求できる株式のことでしたが、今回の取得条項付株式は、一定の事由が生じたことを条件として、株式会社が強制的に株式を取得することができる株式のことを言います。つまり取得請求権付種類株式と比較して、会社側に請求権を行使するか否かの選択権があることに大きな意義があります。  種類株式発行会社において取得条項付種類株式を発行する場合には、以下の事項を予め定款に定めておく必要があります。

 (1)一定の事由が生じた日に発行会社がその株式を取得する旨及びその事由(当該発行会社が別に定める日が到来することをもって当該事由とするときはその旨)

 (2)(1)の事由が生じた日に当該種類株式の一部を取得することとするときは、その旨及び当該一部の決定方法

 (3)当該種類株式1株を取得するのと引き換えに当該株主に対して交付する対価の内容・数額等又はその算定方法

 株式を公開するような会社においては、実務上、上場申請時までに普通株式以外の種類株式を消却しておくことを求められることも多いため、株式上場を目指している非公開会社の発行する(普通株式以外の)種類株式には、上場申請時やその意思決定の時に取得の効力が生じる(普通株式を対価とする)取得条項が付されていることも多くあります。
 また、上場とかは特に目指していないような会社においても、例えば優先株式に取得条項を付しておくことにより、配当負担の重い優先株式を発行会社の決定により消滅させることができるため、活用されることがあります。また、一定の事由を「株主の死亡」としておけば、株主が死亡し相続が発生したとしても、株式の拡散を防止することが可能となります。

 取得条項付種類株式の活用は、取得請求権付種類株式と同様、さまざまな活用場面がありますが、他の種類株式と組み合わせることでより効果を発揮するものと言えます。取得条項種類株式の発行を検討する際は、他の株式との組み合わせも考慮しながら発行するのが良いかもしれません。

 次回は、これも名前がよく似ている「全部取得条項付種類株式」について触れてみたいと思います。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
                     前へ<<               >>次へ
>>司法書士のつぶやきリストに戻る