みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
前回は、種類株式についてのうち、全部取得条項付種類株式について説明させていただきました。
今回は、「黄金株」との別名もある「拒否権付種類株式」について説明をさせていただきます。
拒否権付株式とは、株主総会、取締役会または清算人会において決議すべき事項のうち、一定の事項について、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とする旨の定めのある種類株式のことを言います。つまり、拒否権付種類株式を発行している会社では、ある決議事項についてはこれらの決議のほか、拒否権付種類株式の株主の承認まで必要であるため、拒否権付種類株主は、会社の意思決定に対して拒否権の発動ができるということになります。
種類株式発行会社において拒否権付株式を発行する場合は、
(1) 当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項
(2) 当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは当該条件
を定める必要があります。
【規定例】
(拒否権)
第○条 以下の事項については、株主総会または取締役会の決議のほか、優先株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする。
(1)定款の変更
(2)当会社の株式、新株予約権または新株予約権付社債の発行
(3)合併、吸収分割、吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部もしくは一部の承継、新設分割、株式交換、株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得、株式移転、事業の全部もしくは重要な一部の譲渡、他の会社の事業の全部の譲受け、または事業の全部の賃貸、事業の全部の経営の委任、他人と事業上の損益の全部を共通にする契約その他これらに準ずる行為
(4)資本金の額の減少、準備金の額の減少、会社法第450条に定める資本金の額の増加、会社法第451条に定める準備金の額の増加または会社法第452条に定める剰余金の処分
(5)解散
(6)株式の併合、株式の分割、株式無償割当てまたは新株予約権無償割当て
(7)剰余金の配当
(8)自己株式の取得
【活用場面】
拒否権付株式は、ベンチャー企業に対する投資や合弁会社などにおいて、投資額が大きくないために株主総会において支配的な議決権を保有することができない株主が一定の権利を確保するために用いられることが多くあります。
また、外資系投資銀行が投融資をする際に、相手をがちがちに縛るケースで使われることも多くあります。
中小企業ではオーナーが高齢になって、後継者にいずれ株式の過半数を渡すが、今の段階ではすべてを後継者に任せることが出来ないようなケースで、自分の地位を守るために発行することがあります。
拒否権付株式は、その種類株主にとっては非常に大きな権限を与えることとなるが、経営者側が自分の身を守るための防衛策として過度に他の株主の利益を害してしまわないように、発行する際には十分に配慮が必要と思います。
発行を検討する際には、しっかりと専門家にご相談されることをお勧めします。
回答者 司法書士 安藤 功
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