司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成25年11月号》
取締役・監査役選解任件付種類株式について

みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
前回は、種類株式のうち、拒否権付種類株式(通称:黄金株)について説明させていただきました。
今回は、「取締役・監査役選解任権付種類株式」について説明をさせていただきます。
 通常の取締役や監査役の選任は、全体の株主総会で選任する必要がありますが、この株式を発行した場合は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において、取締役又は監査役を選任することになります。逆に、この株式が発行された場合は、取締役・監査役の選任は、各種類の株式の種類株主総会で行われ、全体の株主総会では行うことができません。
 この株式は、委員会設置会社を除く、株式の譲渡制限規定のある会社(非公開会社)においてのみ発行することが可能であり、以下の事項を定める必要があります。
 (1) 当該種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること及び選任する取締役又は監査役の数
 (2) (1)の選任の全部又は一部を他の種類株主と共同して行うこととするときは、当該他の種類株主の有する株式の種類及び共同して選任する取締役又は監査役の数
 (3) (1)又は(2)の事項を変更する条件がある場合にはその条件及び当該条件が成就した場合における変更後の(1)又は(2)の事項
 (4) 当該種類株主総会において社外取締役又は社外監査役を選任しなければならないこととする場合には、その旨及び選任しなければならない社外取締役又は社外監査役の人数、当該選任に関する上記(2)及び(3)に相当する事項

【規定例】
 規定例としては、以下のようなものが一般的です。
 1.A種種類株式を有する株主を構成員とする種類株主総会において、取締役○名及び監査役○名を選任する。但し、A種種類株主が保有するA種種類株式の数が当会社の発行済株式総数の○分の○未満となった場合には、この限りではない。
 2.B種種類株式を有する株主を構成員とする種類株主総会において、取締役○名及び監査役○名を選任する。但し、B種種類株主が保有するB種種類株式の数が当会社の発行済株式総数の○分の○未満となった場合には、この限りではない。

【活用場面】
 実務上は、合弁会社・ベンチャー企業等で、株主間契約で合意した数の取締役を各派が選任できるように保証する方策として利用されることが考えられます。ベンチャー企業への投資家にとって、自らの指定する人物を企業の取締役として派遣することは、取締役会の一員として直接経営に関与し、経営の意思決定の段階で影響を与えることが可能となり、投資先企業の育成・監視の点から重要な意義があると言えます。なお、監査役に関して選解任権付の種類株式を発行することも可能とされていますが、ベンチャー投資の実務上では、そのニーズはそれほど高くなく、圧倒的に取締役についてのものが多いとされています。
 各種類株主総会で選任された取締役・監査役であっても、当該種類株主総会を構成する種類株主のみに対してではなく、会社全体に対して善管注意義務を負うため注意する必要があります。
 役員選解任権付種類株式の発行に付いては、パワーバランスをしっかり検討することが非常に重要ですので、ご検討の際は、専門家への相談をおすすめします。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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