司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成26年1月号》
取締役の個別の任期について

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 前回まで、長期にわたり種類株式について一つずつ説明させていただきました。しばらく株式のお話ばかりでしたので、少し株式の話題から遠ざかって、今回は取締役の任期について個別の設定が可能かどうかを検討してみたいと思います。
 平成18年に法律が変わってからは、株式の譲渡制限規定のある会社について、取締役の任期を原則の2年から最長で10年まで伸長することができるようになりました。譲渡制限規定のある会社は、上場しているような大会社と違い、一般的に閉鎖的な会社が多く、むしろ日本にある会社のほとんどが中小零細企業である実情からしても、役員を2年おきに頻繁に改選しなくても良いのではないか!との発想に基づくものです。
 最近では、取締役の任期を最大の10年にしている会社は多く存在します。以前、監査役の任期の変遷(平成24年10月号)で、任期を10年に伸長することで、その分、役員変更登記手続きをしなくて良くなるため経費削減にはなりますが、任期途中で解任してしまった場合の損害賠償の問題や具体的な任期を忘れてしまって登記申請を怠ってしまうリスクもある旨、説明させていただきましたが、このことは、監査役に限らず取締役についても全く同じ事が言えますので、同様に注意が必要です。

【個別の任期の可否について】
 「当会社の取締役の任期は、選任後4年以内に終了する最終の事業年度にかかる定時株主総会の終結をもって満了する」と定めた非公開株式会社の定時株主総会において、新たに取締役を1名選任する場合に、その取締役の任期についてのみ1年とすることは可能でしょうか。
 そもそも、任期を10年まで伸長できることだけが注目されがちですが、任期を2年よりも短縮することも法律上認められています。定款で、取締役の任期を全員4年に伸長されており、例外を禁じた趣旨ではありませんので、これを実現するためには、
 (1)定款中に「ただし、株主総会の決議によって特定の取締役につきその任期を短縮することを妨げない。」旨の追加変更決議をしたうえで、
 (2)新たに選任した取締役の任期を1年とする旨の決議をすると良いでしょう。
 ご参考までに、監査役の任期については、その職務の性格から、任期を短縮することができる規定にはなっていません。よって、株主総会の決議であっても、監査役の任期を短縮することはできません。ただ、定款の規定で、監査役ごとに異なる任期を定めることまでは否定されてません。

回答者  司法書士 安藤 功
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安藤功司法書士事務所
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