司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成26年8月号》
事業年度の変更と取締役の任期について

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。

 3月決算の会社においては、5月や6月にかけて定時総会を迎えられた会社もたくさんあるのではないでしょうか。今回は、数年に一度、定時総会時に到来する取締役の任期と事業年度の変更との関係について記載したいと思います。

たとえば、事業年度を1月1日から12月31日までとする株式会社において、平成24年2月20日に開催された定時株主総会で取締役Aが選任されたとします。
 しかし、当該会社は、平成25年6月26日に開催された臨時株主総会において、事業年度に係る定款の定めを変更し、事業年度を毎年4月1日から翌年3月31日までとするとともに、変更後最初の事業年度を平成25年1月1日から平成26年3月31日までの1年3か月としました。
 この場合に、平成24年2月20日開催の定時株主総会で選任された取締役Aの任期はいつ終了するのでしょうか。なお、この会社の取締役の任期に関する定款規定は、「選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会終結の時まで」となっているものとします。
 この会社の取締役Aの任期を考える場合に、下記の2通りがありそうですが、いかがでしょうか。
 役員の任期満了は、事後の定款変更によっても「遡る」ことはありません。一見、平成25年6月26日に臨時株主総会を開き定款変更決議をした結果、平成25年2月に開催されたであろう定時株主総会が選任後2年内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会となるため、その終結時に遡って任期満了となるようにも思えます。しかし、先ほど述べたとおり、役員の任期満了は、事後の定款変更によっても「遡る」ことはありませんので、実際には取締役Aの任期は、臨時総会による定款変更の効力が発生した時点、つまり、平成25年6月26日の臨時株主総会開催時に任期満了となります。
 なお、会社法及び会社計算規則により、変更後の最初の事業年度の期間は1年6か月以内であればよいとされていますから、設例の定款変更は違法ではありません。
 非常に判断が難しいところですが、事業年度の変更に伴う役員任期の計算を間違うことで、登記懈怠で過料の制裁を受ける可能性もあるところですので、しっかりとした判断ができるように注意する必要があります。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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