司法書士のつぶやき

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成27年5月号》
会社法改正シリーズ〜監査役の登記事項の改正について〜

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 前回は平成27年3月16日通達により、代表取締役の全員が日本に住所を有しない株式会社の設立・重任登記・就任登記が可能となった点について触れました。これから数回については、通達ではなく、会社法の改正による法務面・手続面の変更について記載いたします。
 この改正会社法の施行日が平成27年5月1日ですので、商法の一部が会社法に改正され施行された平成18年5月1日からは約9年ぶりの改正となります。難しい論点の改正は省き、実務に直結しそうな部分についてのみ触れていきたいと思います。

【監査役における登記事項の改正点】
 実務においては、「監査役設置会社」か否かを判断する場面があります。会社法上は監査役が会計監査権限の他に業務監査権限をも有する監査役を置く会社を「監査役設置会社」と呼び、登記上の「監査役設置会社」とは、単純に登記簿上に監査役が登記されているかのみの判断であり、業務監査権限を有するかどうかまでは要しないものでした。会社法上、業務権限を有する監査役に関しては、株主代表訴訟における訴訟的の請求先になったり、会社と取締役間の訴訟において馴れ合い防止のための一躍を担う存在となりますが、実際に登記されている監査役が業務権限を有しているか否かを判断することは出来ず、株主や債権者が定款を閲覧する方法があるにしても、実務上の不都合は否めませんでした。
 そこで、法改正によりこの不都合を解消する措置がなされ、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する場合は、その旨を登記事項とすることになりました。

【既存会社の監査役の取り扱いについて】
 既存の会社に監査役が登記されている場合、この監査役が会計権限のみを有する場合は、平成27年5月1日以後、速やかにその旨の登記をしないといけないのか疑問が残ります。この点に関しては、附則により、「この法律の施行後最初に監査役が就任し、又は退任するまでの間は、登記をすることを要しない」とされており、次回の任期が来るまでは登記不要となります。これは、登記をしてはいけない旨の規定ではありませんので、例えば取締役の辞任登記の際に、監査役の監査の範囲を登記することも可能です。また、本来登記すべきところ、失念して登記をしなかった場合は、登記法の規定に照らし、過料の制裁もありますので注意しましょう。

 今後の対応については、まだまだ不明な点もありますが、少しずつ実務上の取り扱いも固まってくることでしょう。ご不明な点は、専門家にしっかり確認されることをお勧めします。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
                     前へ<<               >>次へ
>>司法書士のつぶやきリストに戻る