司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成27年7月号》
会社法改正シリーズ〜総数引受契約に関する改正について〜

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 ここ数回は、平成27年5月1日に施行された改正会社法の中でポイントとなる点を記載してきましたが、今回も引き続き改正点について記載いたします。
 今回は、募集株式の発行時における総数引受契約に関する改正についてポイントを絞って触れていきたいと思います。

【総数引受契約における改正点】
 従来より募集株式を発行する際は、「募集決議→申込み→割当て→引受け→払込み」の順番で手続きが進みますが、この際の割当て(申込みに対する会社の承諾に該当)については、募集する株式が譲渡制限付株式の場合に、原則として株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)の決議を要求しております。これは、譲渡が制限されている株式については、会社が好まない者を参入することを拒否するため、また、譲渡制限株主の持株比率の保護のために設けられております。
 しかし、総数引受契約をした場合にはこの適用を排除しているため、譲渡制限株式に関する会社の好まない者の参入の拒否や譲渡制限株主の持株比率の保護の要請に応えていないこととなり、これらの問題点を改正する必要が生じました。
 この改正により、総数引受契約により募集株式が譲渡制限株式である時にも、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)の決議により総数引受契約の承認を受けることになり、上記問題点を解消することが出来るようになりました。
 これは、募集新株予約権の申込み及び割当てに関しても同様の規定が追加されております。

【登記の際の問題点】
 取締役会を置かない株式会社の募集株式の発行においては、発行の決議も割当ての決議も株主総会によるため、この改正がされたことによる影響はそれほどありませんが、取締役会設置会社については、発行決議は株主総会で、総数引受契約の承認決議を取締役会でする必要があるため、登記をする際の添付書面として、これまでにはなかった取締役会議事録を添付する必要があります。

 実務の現場においても株主総会の招集するための取締役会決議で、募集株式の発行を株主総会で決議することを条件にあらかじめ総数引受契約の承認をしたり、非公開会社において、書面決議により取締役会の開催を省略するなどして対応することもあると思います。まだまだ不明な点が多くありますが、少しずつ実務上の注意点等も浮き彫りにされることでしょう。ご不明な点は、専門家にしっかり確認されることをお勧めします。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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