司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成27年8月号》
不動産の売買等に伴う登記と課税について

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
不動産の取引の際に、買主から売買代金以外に必要な費用について尋ねられることがあります。そこで今回は不動産を売買等した場合の課税関係のうち、司法書士として最低限知っておかなければならない課税関係に触れていきたいと思います。具体的な数字については税理士が専門となりますので、ここでは、あくまでも想定されうる税金としてどのようなものがあるかを検討するに留めたいと思います。

【登録免許税】
 不動産を購入する場合は買主側に登録免許税(国税)がかかります。売買であれば土地に対しては評価額の15/1000、建物については20/1000(ただし、住宅用家屋については3/1000)が登記時に必要となります。売買に伴い住宅ローンを借り入れるに際しても借入額の4/1000(住宅用家屋に関しては1/1000)がかかることになり、これらは司法書士として事前に計算をして取引に臨むことになります。家屋については一定の要件のもと、住宅用家屋として証明を受けることができれば軽減措置がありますので、こちらも事前に把握しておく必要があります。

【不動産取得税】
 不動産を取得した人は、都道府県税として不動産取得税が課されます。ここでいう不動産の取得とは、家屋尾新築・増改築、土地は家屋の売買、贈与、交換などにより現実に不動産の所有権を取得することをいいます。ここでは、相続による取得や、学校法人、宗教法人などが本来的に事業に用いるための不動産の取得であれば非課税となります。不動産を取得したときは、その日から60日以内に不動産所在地管轄の都道府県税事務所に申告をすることになります。登録免許税と異なり、登記手続きに直接必要な費用ではなく、後日に課税されるため司法書士が正確な知識を持っているものではありません。しかし、買主にとっては重要なことですので基本的な知識は必要です。税率は本則としては土地・建物いずれも不動産の価格の4%ですが、取得する時期によって、あるいは、住宅用家屋等については軽減措置があるなど、本則の適用を受けるとは限りませんのでご注意ください。

【固定資産税】
 固定資産税とは、毎年1月1日に土地や家屋といった固定資産を所有する人に市町村が課する税金です。不動産を所有する方にとってはある程度なじみのある税金だと思います。1月1日付の不動産の登記簿上の所有者に課税されますので、1年の途中で不動産の売買(ほとんどがこのケース)をした場合、1月1日から売買日までの日割り計算で固定資産税を計算することになります。税率は課税標準額という独自の評価額をもとに、原則1.4/100となります。

【譲渡所得税】
 不動産を取得した者には以上のような税金が課されますが、不動産を売却した場合にも税金が課されることがあります。ここでも具体的な数字は割愛しますが、土地や建物を売却した場合の売買代金は収入とされます。これは、土地建物等で譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を超えるものと長期譲渡所得、同じく1月1日における所有期間が5年以下であるものが短期譲渡所得として大きく税率が異なります。現行の制度では、長期譲渡所得が譲渡所得金額の15%、短期譲渡所得が譲渡所得金額の30%に復興特別所得税が別途課されます。譲渡所得の計算については、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差引いて計算することになります。

上記のように、買主はある程度想定される税金ですが、売主にも譲渡所得税が課されることがありますので、事前に税務相談が必要なケースもあります。司法書士は上記税務的要素がクリアになったところで登記手続きをすることになりますが、売主・買主双方にとって想定外の税金がかかることのないように注意する必要があります。また、ここでは触れておりませんが、売買として形式上は売買代金を支払っても、それが著しく廉価な売買代金であれば、差額を贈与として贈与税を課されることがありますので、その点もしっかりと検討することが必要でしょう。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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