司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成27年10月号》
家族信託について

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 最近、「家族信託」という言葉を聞く機会が多くなってきました。一昔前は、信託業法の関係で、信託を引き受けるには免許が必要であったため、信託銀行や信託会社が関与するものばかりでしたが、平成19年の信託業法改正により、「利益を得る目的で反復継続」して信託を受託しなければ、受託者に信託業法の免許は不要となったため、「家族信託」が徐々に浸透し始めてきました。

【家族信託とは】
 相続の対策として信託の活用が注目されています。例えば、父親所有の家を、長男に信託し、長男は父親の自宅を管理し、父親がその自宅に住み続けるという方法です。信託により、家の所有権は父親から長男に移転し、所有権は長男のものとなります。しかし、信託財産にかかる経済的な価値は受益者(父親)のものとなります。

【家族信託を利用した相続対策】のメリット

 1.財産管理の容易さ
 例えば、家の名義は父親から長男に移しながらも、その財産を父親自身のために使うような場合は、父親が受託者兼受益者、長男が受託者となるように「家族信託」を利用することで、老後の資産管理を安心して長男に任せられることになります。これによって、万が一、父親の判断能力が衰えても、成年後見制度を利用することなく、信託の定めにより財産管理が可能となるなどのメリットもあります。

 2.遺言の代用
 遺言が厳格な方式に従って作成しなければならないことに対し、信託は委託者と受託者の契約によって成立します。信託契約で信託財産の帰属を定めることによって、遺言と同じ効果を発揮させることができます。遺言は死後に効力が発生するのに対し、信託は契約の締結と同時に効力を発揮します。

 3.財産承継の順番を決められる
 これまでの相続対策は、生前贈与や遺言を利用して、承継者を指定してきました。ところが、この方法では、更にその次の承継者までも決めることはできません。家族信託を利用することで、事実上、相続の順番を決めることが可能です。例えば、長男を受益者としながら、長男が亡くなった後の受益者を次男に指定することも可能です。事業承継対策として有効な方法となることでしょう。

回答者  司法書士 安藤 功
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安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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