司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成28年3月号》
100%減資について

 皆さん、こんにちは。司法書士の安藤です。今回は会社における資本金の額の減少手続きのうち、主に100%減資について触れてみようと思います。

 まず初めに、減資とは、会社の資本金を減少することを言います。資本金の額の減少には、大きく有償減資と無償減資の2種類あります。有償減資は資本金を減少することにより剰余金を増加させることで株主への分配を行うことを目的として行う減資であり、無償減資とは株主に対して分配・配当を行うことは目的とせず、損失を補てんし会社を再生させることを目的として行われます。両者の大きな違いは、株主に対して配当を行うことを意図しているか否かということになります。

 減資を行う主な目的は、会社の規模を縮小させることにあります。実際には、会社の業績が芳しくない場合に、@欠損を填補し財政を立て直す手段、A株主に会社財産の払い戻しを行う手段、B赤字会社を更正させる手段として行われます。

 100%減資とは、発行済み株式の全てを償却する方法です。実務的には債務超過の会社などが、この手続きを行い、会社を再生させたりします。既存の株式の全てを会社が強制的に買い取り、償却することで株主を総入れ替えすることが可能となります。その後、増資を行うことが一般的であり、こうすることで、一旦全てをまっさらな状態にして、再度の出資者を募ることで、会社再生を可能とします。会社が強制的に株式を取得するので、全部取得条項付株式を用いることになります。なお、全部取得条項株式は、株主総会での特別決議が必要となります。実際に取得するに際しても特別決議が必要です。通常は、一度の総会で、導入及び取得を行います。全部取得条項付株式を導入する方法は、バックナンバー平成25年9月号をご確認ください。

 資本金の減少を決議した場合には、会社の債権者に対して、決定したことを知らせる手続きが必要です。会社の債権者は、会社の財産のみが担保ですので、資本金が減少すれば、将来において不利益を被る可能性があります。そこで、会社の債権者にも一定の異議を述べる機会を与える必要があります。原則として、官報で公告し、かつ、知れている債権者には個別に催告をし、債権者へ通知することになります。

 減資は、自分だけが手続きを行えばよいのではなく、株主はもちろんのこと、債権者の関与も必要となる手続きです。やり方ひとつ間違えると、減資無効の訴えに発展する可能性もございます。特に慎重さが要求される場面ですので、ご検討の際は専門家への相談を必ずお忘れなく。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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