司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成28年4月号》
休眠担保権の抹消について

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 平成27年1月号で「担保抹消について」とのテーマの中で、古い抵当権の抹消についてほんの少しだけ触れておりました。
 今回は、その点を掘り下げて書くことにします。
 現在、昭和30年よりも前になされた抵当権の登記は、全体の約2%と推定されています。

 例えばある不動産を購入したいと考え登記簿を取ってみると、明治時代とか大正時代とかで、どこの誰だかわからない人が抵当権者となっていることがあります。所有者も相続で取得している不動産であるため、当時の状況を知る人がいないケースが考えられます。登記簿には抵当権者の住所と名前が登記されていますが、手紙を送っても何の返答もないし、もしかしたら、その抵当権者は既に亡くなっている可能性もあります。ただし、買主からしてみれば抵当権が付いたままの状態で不動産を購入するわけにはいかないでしょう。

 抵当権を抹消するためには、所有者と抵当権者による登記申請が必要となります。今回のケースにおいては、抵当権者が見つからないため法務局への登記申請ができない状況となります。そこで、例外的に以下のような方法をとれば、抵当権を抹消することができるように法律上定められています。

【除権判決による単独申請】
 本来、抹消登記に協力すべき抵当権者が行方不明の場合に、所有者が裁判所に対して公示催告の申立てをして、除権判決を得て、その謄本を申請書に添付して単独で抹消登記申請をする。

【債権証書並びに債権及び最後の2年分の定期金の受け取り証書を添付してなす単独申請】
 先取特権、質権、又は抵当権に関する登記の抹消は、抵当権者等が行方不明の時は、債権証書並びに債権及び最後の2年分の定期金の受取証書を添付すれば、所有者が単独で抹消登記ができるというものです。これは所有者が上記の書類を所持しているという事は既に債権は消滅している蓋然性が高いという考えに基づくものですが、実務上は、そもそも所有者がそのような書類を持っているケースがほとんどなく休眠担保権の抹消手続きにおいては少ないのかもしれません。

【供託による抹消手続】
 上記2つの抹消方法は現実的には利用はそれほど多くありません。不動産の円滑な取引を進めるために、先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を、供託を用いてすることもできるようになっています。@抵当権者等が行方不明であること。A被担保債権の弁済期から20年を経過したことB被担保債権の弁済期から20年を経過した後に債権、利息及び債務の不履行によって生じた損害の全額を供託したことを証する書面を添付すること、以上3つの要件を満たす場合には、債務者が単独で抹消登記をすることができます。

 以上、特に3番目の方法で、古い担保権等を抹消することが可能です。しかし、どの方法も通常の抹消登記に比べれば格段に難易度が高く、供託する場合でも計算方法や行方不明をどのように証明するのか等、手続きに困難を要することが考えられます。古くなった抵当権などがついているのを発見した場合、できるだけ早めに対応することをお勧めします。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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