司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成28年6月号》
相続放棄と利益相反について

 皆さん、こんにちは。司法書士の安藤です。前回は相続放棄と課税台帳主義に関して説明を致しましたが、今回は相続放棄と利益相反というテーマで説明したいと思います。

【今回の相談内容】
 夫が死亡し相続が発生しましたが、遺産としては夫が住宅ローンを組んで購入した自宅が残るのみで、その他の主だった資産は特にありません。相続人は妻である私と長男(14歳)及び次男(10歳)の3人ですが、こども達はまだ未成年なので、家の名義は妻である私の名義とし、息子たちは相続放棄という手続きをしようと考えております。相続放棄は家庭裁判所に対して手続きをすると聞いたことがありますが、こども達の手続きについては、親権者である私が代わりに行うことはできるのでしょうか。

【利益相反行為】
 未成年者が相続放棄をする場合、親権者が未成年者の代わりに相続放棄の申立てをすることになります。ところが、今回のようなケースでは、親権者である母親が未成年者2人の相続放棄をすることで母親は自分の取り分が増える結果となってしまいます。そのため、親権者が相続放棄をすることについては相続人としての利益と相続人である未成年者の利益が相反する利益相反行為として、家庭裁判所に対して特別代理人という別の法定代理人を選任する必要があります。利益相反行為とは、ある行為により、一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為であり、一般的には、行為者が一方に関与していると同時に、他方にも関与している場合に問題になります。今回のケースがまさにその典型例ですが、例えば、2人の未成年者の相続放棄と同時に相続人である母も相続放棄をするのであれば、客観的にみてある一方(母)のみの利益となるものではないので、利益相反行為には該当しません。

【特別代理人とは】
 特別代理人の候補者は、未成年者と利害関係がなければ基本的には誰でも構いません。身内である叔父・叔母などがなるケースも多くあります。しかし、未成年者の利益をしっかりと考え行動することができる人選をする必要があり、申し立て手続きも専門性を有するため、相続放棄をするにあたりまずは専門家である司法書士へのご相談をお勧めいたします。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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