司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成28年8月号》
法人設立時における現物出資について

 皆さん、こんにちは。司法書士の安藤です。今回は、法人設立や募集株式の発行の際の現物出資について触れてみたいと思います。

 会社を設立する場合や増資をする際には、資本金を通常は現金で出資しますが、現金以外でも出資が出来ることがあります。お金以外の物による出資を「現物出資」といいます。現物出資の対象のとなる物の範囲は広く、「譲渡可能で、貸借対照表上に資産として計上できるお金以外の物」全てとなります。お金での出資の方が手続き上は簡単なのですが、手持ちの現金が不足している場合などには、手持ち資産を活用出来るメリットが有ります。

 会社設立の時などにパソコン、不動産、車、債券や有価証券などお金以外の物による出資を「現物出資」といいます。会社設立時は、出資者である発起人のみが現物出資をすることが認められています。また、現物出資は、会社設立時にかぎらず、後で増資するときでも可能です。

 今回は、法人の設立時にのみ言及します。法人設立時に現物出資をするには、「出資者の名前、その財産、その価額、出資者に対して割り当てる設立時発行株式の数」を定款に記載する必要があります。また、現物として提供された物が客観的にみて相当額での評価がなされているのかどうかを確認するために、裁判所が選任した検査役の調査が必要となります。裁判所をとおすことで、手間暇かかりますし、何よりも時間がかかってしまいます。そのため、検査役の調査を回避する手段として、以下のいずれかに該当する場合は検査役の調査が不要となります。実務的にも、検査役の調査を不要とするような現物出資をするのが賢明だと思います。

 1.市場価格のある有価証券であり、定款に記載された価額(定款の認証の日における最終市場価格)を超えない場合

 2.定款に記載の価額が相当であると弁護士、税理士等の証明(不動産はさらに不動産鑑定士の鑑定評価が必要)を受けた場合。この場合は専門家への報酬が別途必要ですので、事前に費用などを確認する必要があります。

 3.現物出資動産の総額が500万円以下の場合。その際、設立時の取締役等が「現物出資の価額が相当であるという調査報告書」が必要です。いくらするかは、その時の「市場価格」「時価」で評価します。 上記のように調査役による調査を回避できない場合は、出資する現物の時価を取締役が調査し、定款に記載し、現物価格が相当であることを取締役が調査の上、報告書を作成し、出資者からの財産の「財産引継書」を作成することが必要となります。このように、手続上は非常に大変な作業になります。手持ちの現金がなければ現物出資も有用ですが、それはそれで書類等難しい部分もありますので、困った際には専門家への相談をお勧めします。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
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