司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成28年11月号》
相続における法定相続情報証明制度(仮称)について

 平成28年7月5日、法務省より相続手続きを簡素化する「法定相続情報証明制度(仮称)」を来年度に新設する旨が発表されました。

 この法定相続情報証明制度は、最初に戸籍一式を法務局に提出すれば、法務局が法定相続人の証明書を発行してくれるというものです。そして、この証明書を戸籍謄本の原本一式に代えて各金融機関や役所などに提出することで、戸籍謄本の原本の提出が省略できます。証明書が数枚あれば、同時並行に各所での相続手続きを進めることができるようになりますから、今までよりも迅速な手続きの進行が可能になると考えられます。これまで一人の相続に対し、何通も戸籍等一式を揃えなければならなかったことを考えると、随分手間が省けて費用も抑えることができるため、早く施行していただきたいと思います。

 ところが、各金融機関では相続関係の確認が簡易になるため、大幅なコスト減になる一方で、各法務局では相続登記の申請に関して提出される戸籍謄本の他に、戸籍の確認業務が増えるとなると、通常の登記業務の方にも(登記の完了が今より遅くなる等)影響を及ぼさないかの一抹の不安はあります。

 また、現時点での発表では、申請人側で作成した相続関係図を基に、法務局がそれを証明するという形で証明書を発行するとのことのようですので、どのような証明書として交付されるのかは分かりませんが、簡単に偽造できないような仕組みにして欲しいものです。
 ただし、この制度が新設されても、戸籍謄本の提出に代えて法定相続情報証明書を提出すれば、法定相続人を証明することができるに過ぎず、遺産分割を行う場合にはこれまで通りに遺産分割協議書の添付が必要となりますので、少し便利になったという程度でしょうか。
 今まで通り、戸籍を全て集めるという作業は軽減されません。
 窓口に行けば、被相続人の出生〜死亡までの戸籍と、被相続人の法定相続人の戸籍一式がすぐに出てくるような制度になれば、一般の方にとって、手続が非常に容易になるので、良いのですけどね。今後の改正が望まれるところです。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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