税金ワンポイント

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福岡!企業!元気!のための税金ワンポイント 《平成22年5月号》
中小法人等の青色欠損金の繰戻還付

 最近の新聞等で,景気判断の上方修正や不動産取引の持ち直し等が報道され,景気回復の兆しが見え始めた感じがありますが,まだまだ,業績が厳しく,税務申告上の所得金額が赤字となるところが多いのではないでしょうか。

 青色申告法人において欠損金が生じた場合,法人税法上、繰越控除と繰戻還付の制度が設けられています。
 青色欠損金の繰越控除は、皆さんよくご存知だと思われますが、これとは別に、繰戻還付という制度があります。
 この繰戻還付の規定は前からあったのですが、租税特別措置法で所定の欠損金額については、その適用が停止されています。
 ところが、平成21年度の税制改正により、中小法人等の欠損金額については、不適用措置の対象から除外され、繰戻還付の規定を適用できることとなりました。

【中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付の不適用】(措法66の13)
1. 平成21年度税制改正前の制度の概要
 法人の平成4年4月1日から平成22年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、原則として、法人税法第80条第1項≪欠損金の繰戻しによる還付≫の規定を適用することができないこととされていました。

2. 平成21年度税制改正の内容の概要
 平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、欠損金の繰戻しによる還付の不適用措置の対象から次に掲げる法人を除外し、これらの法人の各事業年度において生じた欠損金額について、欠損金の繰戻しによる還付の規定を適用できることとなりました。
 (注)解散等の一定の事実が生じた日前1年以内に終了した事業年度又は同日の属する事業年度の欠損金額については、本制度の対象となる欠損金額から除かれます。

 @普通法人のうち、当該事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないもの(保険業法に規定する相互会社及び所定のものを除きます)
 A公益法人等又は協同組合等
 B法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされているもので所定のもの
 C人格のない社団等

【欠損金の繰戻しによる還付】(法法80@)
 青色申告書である確定申告書を提出する法人は、その確定申告書を提出する事業年度において生じた欠損金額がある場合には、その事業年度(以下「欠損事業年度」といいます。)
 開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(以下「還付所得事業年度」といいます。)に繰り戻して法人税の還付を請求することができる制度です。
 この制度の適用を受けるためには、次の@からBのいずれにも該当する必要があります。

 @還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度まで連続して青色申告書である確定申告書を提出していること
 A欠損事業年度の確定申告書を青色申告書により提出期限内に提出していること
 B確定申告書の提出と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出していること

(算式)

【設例】

(事業年度)所得金額法人税額
還付所得事業年度H20.4.1-H21.3.315,000,000円1,100,000円
欠損事業年度H21.4.1-H22.3.31△25,000,000円0円

[欠損金の繰戻しによる還付請求額]
1,100,000円×5,000,000円÷5,000,000円=1,100,000円

[欠損事業年度の翌事業年度に繰越す欠損金額]
25,000,000円−5,000,000円=20,000,000円

 最後に、この欠損金の繰戻還付は、繰越控除だけを適用する場合に比べて、1期分多く控除することができますので、繰越欠損金が控除しきれずに期限切れとなるリスクを低くすることができます。
 また、現金で還付されますので、資金繰りに活用できます。

回答者 税理士 鵜池 隆充
鵜池隆充税理士事務所 税理士鵜池隆充
〒810-0073福岡市中央区舞鶴2-4-13九州DKビル6階
TEL:092-771-0361 FAX:092-771-0362
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