法人税法上,役員に対する給与の取扱いの概略は,次のとおりです。
1,退職給与等以外の役員給与で次に掲げるもの以外の損金不算入(法法34@)
@ 定期同額給与
A 事前確定届出給与
B 利益連動給与
2,過大な役員給与の損金不算入(法法34A)
3,事実隠ぺい又は仮装経理による役員給与の損金不算入(法法34B)
今回は,このうち,「定期同額給与」についてです。
【役員給与の損金不算入】(法法34@)
内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与及び第54条第1項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する新株予約権によるもの並びにこれら以外のもので使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの並びに第3項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入しない。
一 定期同額給与
その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与(次号において「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(次号において「定期同額給与」という。)
二及び三 省略
【定期同額給与の範囲】(法令69@)
法第34条第1項第1号(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める給与は,次に掲げる給与と
する。
一 法第34条第1項第1号に規定する定期給与(以下この条において「定期給与」という。)で,次に掲げる改定(以下この号において「給与改定」という。)がされた場合における当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるもの。
イ 3か月等以内の改定
当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日(保険会社にあっては,当該会計期間開始の日から4月を経過する日。)まで(定期給与の額の改定(継続して毎年所定の時期にされるものに限る。)が3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合にあっては,当該改定の時期)にされた定期給与の額の改定
ロ 臨時改定事由による改定
当該事業年度において当該内国法人の役員の職制上の地位の変更,その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(次項第2号及び第3項第1号において「臨時改定事由」という。)によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定(イに掲げる改定を除く。)
ハ 業績悪化改定事由による改定
当該事業年度において当該内国法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由
(第3項第2号において「業績悪化改定事由」という。)によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限り,イ及びロに掲げる改定を除く。)
二 継続的に供与される経済的な利益のうち,その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの
【職制上の地位の変更等】(法基通9-2-12の3)
令第69条第1項第1号ロ《定期同額給与の範囲等》に規定する「役員の職制上の地位の変更,その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」とは,例えば,定時株主総会後,次の定時株主総会までの間において社長が退任したことに伴い臨時株主総会の決議により副社長が社長に就任する場合や,合併に伴いその役員の職務の内容が大幅に変更される場合をいう。
(注)役員の職制上の地位とは,定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により付与されたも
のをいう。
【経営の状況の著しい悪化に類する理由】(法基通9-2-13)
令第69条第1項第1号ハ《定期同額給与の範囲等》に規定する「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは,経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから,法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する。
次号へ続く
回答者 税理士 鵜池 隆充
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