税金ワンポイント

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福岡!企業!元気!のための税金ワンポイント 《平成25年10月号》
保険金等と退職金等A
先月号に引き続き,今回は,保険金を原資とする退職金についての判例の一部をご紹介いたします。

T 高松地裁平成 4 年(行ウ)第 2 号法人税更正処分等取消請求事件(棄却)(確定) 平成 5 年 6 月 29 日判決
 【判示(4)】
 8 生命保険金を原資としたことについて
 原告は,○○を被保険者とする生命保険契約を引継ぎ,同人死亡後右保険金を受け取ったこと,右保険金より○○の遺族に対して退職給与を支払ったことは当事者間に争いがない。

 【判示(5)】
 原告は,役員退職給与の相当額の算定に当たり,右保険金を退職金の原資としたことを考慮すべきである旨主張するが,利益金としての保険金収入と,損金としての退職給与金の支給とは,それぞれ別個に考えるべきものであり,会社が役員を被保険者とする生命保険契約を締結するのは,永年勤続の後に退職する役員に退職給与金を支給する必要を充足するためのほか,役員の死亡による経営上の損失を補填するためであるというべきであるから,会社が取得した保険金中,当該役員の退職給与の相当な額より多額であると認められる部分は,役員の死亡により会社の受ける経営上の損失の補填のために会社に留保されなければならないというべきである。
 したがって,保険金を原資としたことを役員退職給与の相当額算定の資料として考慮しなかった被告の算定方法が不合理であるとは言えない。

 9 以上により,平均功績倍率法によって,相当な退職給与の額を計算すると,次の算式のとおり○○円となる。
 〔最終(適正)報酬月額〕○○円×(在職年数)○○年×(功績倍率)○.○=(相当な退職給与の額)○○円
                                      (TAINS)Z195-7150 より引用

U 長野地裁昭和 56 年(行ウ)第 12 号法人税更正処分等取消請求事件(棄却)(確定) 昭和 62 年 4 月 16 日判決

 (3) 原告は, その反論1において, 本件のように役員が死亡した際にその遺族に対して支払うことを予定して, 法人を受取人とする生命保険契約が締結されていたところ, 保険事故が発生し, 法人が入手した生命保険金をその遺族に対して支払った場合には, その金額のいかんを問わず, 全額を損金算入するのが法人税法36条の趣旨にも税務行政の実態にも合致すると主張し, 更に, その根拠として, 役員の退職金の高額化傾向に伴い,企業, 特に資本金の小さい同族企業にあっては生命保険金を役員退職金の唯一の原資としているのが実態である。生命の代償たる死亡退職金に対し相続税及び法人税が課せられるのは二重課税として許されない。退職金額の相当性は経済事情からみて正常か否かで決すべきものであるところ, 法人の退職金支払能力は, 生命保険の支払いを受けたことにより生じたのであり, 役員の死亡が右原資を得るについての貢献であるから, 生命保険金の全額又は大半を役員の退職金として遺族に支給することは経済事情からみて正常である,などと主張する。
 ししかしながら, 前記判示のとおり, 法人税法36条の趣旨からみて, 役員退職給与の損金性は, 役員の法人に対する役員としての役務提供による貢献度によって決せられるべきものであるから, 退職給与の支給とその原資は切り離して考えるべきであり, その原資が当該役員の死亡を原因として支払われた生命保険金であるからといって, 当然に支給額の全部または一部が相当な額として損金に算入されるべき理由はない。更に, 役員を被保険者, 保険金受取人を法人とする生命保険契約の実態についてみるに, いずれも成立に争いのない甲第8, 第9号証に弁論の全趣旨を総合すると, 現今右生命保険の大型化傾向があること及び右生命保険契約締結の目的に役員の退職給与の原資の準備が含まれていることは否定できないものの, その主たる目的は役員死亡に伴う法人の経営上の損失を補填することにあると認められるから, 生命保険契約の実態は, 必ずしも,生命保険金を原資とする退職給与を損金に算入すべき根拠たりえない。また, 原告の主張するような税務行政の実態を認めるに足りる証拠はなく, 本件において, 相続税と法人税は課税の対象及び租税の性質を異にするから, 二重課税にあたらない。退職金額の相当性判断の基準として原告が挙げる経済事情も前記法人税法36条の趣旨と合致しない独自の見解というほかない。以上のとおり, 原告の反論1は失当といわざるをえない。
                                      (TAINS)Z158-5909 より引用

次号へつづく
回答者 税理士 鵜池 隆充
鵜池隆充税理士事務所 税理士鵜池隆充
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