こんにちは。今回も、最近よく耳にする話題から入りたいと思います。
2012 年8 月22日に「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(略称は消費税法改正法)公布されました。
同法では、一定の条件付で、消費税率について、2014 年4 月から8%、2015 年10 月から10%に引き上げることとしており、引上げの最終判断はその時の政権が経済状況等に基づいて行うとされています。
また、12月の選挙結果にもよるとは思いますが、所得税の最高税率引上げ、相続税・贈与税の見直し(課税最低限・税率等)が2013 年度税制改正で検討される予定です。
消費税増税の影響
最初に、消費税増税の影響を単純化したシミュレーションで示してみましょう。
損益計算書 | 現 在 | 2014年度(8%) | 2016年度(10%) |
売 上 高 | 1,000( 50) | 1,000( 80) | 1,000(100) |
原 価 | △400(△20) | △400(△32) | △400(△40) |
人 件 費 | △200( −) | △200( −) | △200( −) |
経 費 | △300(△15) | △300(△24) | △300(△30) |
利 益 | 100 | 100 | 100 |
(法人税等) | (△40) | (△40) | (△40) |
(消 費 税) | (△15) | (△24) | (△30) |
(Cash) | (+60) | (+60) | (+60) |
※( )は、消費税額で外税表示としています。
※法人税等の率は40%と仮定しています。
いかがしょうか?
いずれの年度も会社に残る資金(Cash)は変わっていません!
消費税は、お客様が支払った消費税を預って、自分が物品等を購入した際に支払った消費税を差し引いた金額を税務署に納税するという仕組みですね。
預る金額が増えるということですので、会社の資金繰りには影響はない。というのが、計算上の発想です。
経営へのインパクト
それでは、何故、経営者の皆様は困り果てているのでしょうか?
「うちは税込でやっているのですが、大丈夫ですか?」
「元請け様の力が強いので、増税分の値引を強要されてしまいそうなんです。。。」
ひとつは、売上に消費税の増加分を転嫁できなかった場合に、大きな影響が生じるということです。
では、売上に転嫁できなかった場合のシミュレーションを見てみましょう。
損益計算書 | 現 在 | 2014年度(8%) | 2016年度(10%) |
売 上 高 | 1,000( 50) | 973( 77) | 955( 95) |
原 価 | △400(△20) | △400(△32) | △400(△40) |
人 件 費 | △200( −) | △200( −) | △200( −) |
経 費 | △300(△15) | △300(△24) | △300(△30) |
利 益 | 100 | 73 | 55 |
(法人税等) | (△40) | (△30) | (△22) |
(消 費 税) | (△15) | (△21) | (△25) |
(Cash) | (+60) | (+43) | (+33) |
これは、大ごとです。このシミュレーションでは、利益率10%という非常に好業績の会社を想定しているのですが、増税のおかげで会社に残る利益がほぼ半分になっています。
消費税増税時に、大企業が中小企業の価格転嫁を拒否した場合に、公正取引委員会が勧告とする等を中心とした基本方針を政府が公表してはいますが、実際のビジネスの現場で、どこまで通用するかはわかりません。また、一般消費者を対象とする小売業者には、政府方針が通用しないでしょう。
大まかでも結構だと思いますので、一度、顧問税理士の方に増税のインパクトについてご相談されるのもよろしいかと思います。
消費税増税への対策
それでは、どのような対策を取ればよいのかということを経営者の方々と話をしています
(1)仕切りの見直し
税込価格で受注している得意先について、可能な限り、今の段階から税別の見積りに見直して頂くよう相談をしておきましょう。先方にも予算がありますので、今期はダメでも来期は対応してくれるかもしれません。
一般消費者がお客様の企業については、まわりの同業者が価格転嫁や税別表示を図るタイミングを逃してはならないと思います。もし、資金余力があれば、逆に価格転嫁を少なめにし、価格競争で優位に立つこともできるかもしれません。
(2)納税資金管理の強化
消費税は、年間の税額に応じて、納税時期が決まっています。突然の納税額に慌てないように月々の資金繰りの中で、消費税納税資金を積み立てておくことが重要になると思います。納税資金を都度借入で対応することをあり得ますが、その借入額が倍になるとどうでしょうか。
(3)節税対策の強化
節税対策についても、一度、見直してみましょう。節税対策の考え方については、前回の散歩みちで記載していますのでご参考ください。
(4)コスト削減策
消費税も企業経営にとっては、ひとつのコストです。売上の増加がなかなか見込めない中で、コストが増加するということですので、別のコストをどうやって下げて現状の利益を維持するかという視点を持っておくべきと思います。
コスト削減は、「支出の効果があるか」という見方で、整理をやってゆきましょう。
一番わかりやすい例え話と思いますが、
「あなたの交際費は、売上につながっていますか?」
一度、自問自答してみましょう。
経営幹部の方に質問をなげかけてみましょう。
次回からは、コスト削減策などにも繋がる管理会計のお話を掘り下げてゆきたいと思います。
ご意見・ご要望などありましたら、下記メールアドレスまでお寄せください。
なお、当記事は、私の私見であることをお断り申し上げます。
回答者 公認会計士 松尾 拓也
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