こんにちは、この記事が出る頃は、丁度、確定申告期限も差し迫ったころだと思います。寒さも少し和らいでいると良いのですが。さて、いよいよ4月より消費税率が8%となります。お客様などからのご質問も「いつまで5%でいいの」といった内容のものが多く寄せられます。平成26年1月に国税庁から「消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」というものが出され、引上げ前後の論点が整理されていますので、ご紹介したいと思います。
Q1.事業者間で、売上・仕入の計上時期が異なるケース
売上側が出荷時に売上計上し、仕入側は検収時に仕入計上をするケースは多くみられます。売上側が3月31日に出荷し、仕入側が4月1日に検収をした場合は、消費税率はどうなるでしょうか?
Q&Aでは、仕入側でも資産譲渡があった3月31日の税率(5%)を適用することとされています。
売上側は、通常の処理をして請求書を発行すれば済むことですが、仕入側では、通常の処理をすると8%の税率で処理される可能性があります。つまりは、4月の仕入や費用処理については、相手先の請求書ベースでの税率適用となるということですね。
Q2.月中締めの請求のケース
Q&Aでは事務機器の年間保守サービスを受けている事例を取り上げています。月々の請求が20日締めとなっている場合で、4月20日締めの請求分について、どの税率を適用すればよいのかという問題です。
このような役務提供契約は、月ごとに役務提供が完了するものと考えられます。したがって、その役務提供の完了した日である4月20日における税率(8%)が適用されるとされています。
ただここで注意を頂きたいのは、このケースは、「月単位の役務提供の場合」ということです。例えば、物品の販売取引で20日締めの請求のケースでは、3月21日〜3月31日までの出荷分は、Q1の考え方で5%が適用されることとなります。
Q3.保守料金を前受するケース
前項のように役務提供の契約のケースですが、月額料金を前受(前払)する場合はどうなるのでしょうか?例えば、4月分の保守料を平成26年3月31日に前受(前払)したような場合です。
答えは、役務の提供が完了した日の税率を適用するという原則に従い、4月の税率(8%)が適用されます。3月に発行する請求書がすべて5%とは限りませんので、この点もご注意ください。
Q4.所有権移転外ファイナンス・リース契約について
「所有権移転外ファイナンス・リース」という形式のリース契約について、支払の都度リース料を計上する処理(通常の賃貸借処理)を採用している場合で、3月にリースが開始された場合に、4月分以降はどの税率が適用されるのでしょうか?
こちらは、資産の譲渡のあった時(一般的にはリース契約日の前後)の税率が適用されます。したがって、3月にリース契約をした場合は、4月分以降も5%が適用されるということです。
リース契約には、「@所有権移転ファイナンス・リース」「A所有権移転外ファイナンス・リース」「Bオペレーティング・リース」の3種類の形式があり、そのうちAについての処理ということになります。Aのケースが圧倒的に多いのですが、わからない場合はリース会社に一度確認しておくとよいかと思います。
ちなみに、@の場合は、リース料処理ではなく資産計上が強制されます。Bの場合は、役務提供契約として、Q2.Q3の考え方が採用されます。
その他
その他の論点として以下のようなケースを取り上げられています。
(1) 部分完成基準が適用される建設工事等の適用税率
・平成26年3月31日までの「部分引渡し」については5%
・平成26年4月 1日以後の「部分引渡し」については8%
(2) 不動産賃貸の賃借料に係る適用税率
前払であっても4月分は8%、後払いであっても3月分は5%
(3) 短期前払費用
1年以内の役務提供に対する前払費用について継続的に支出時に費用処理している企業について、例えば平成25年12月決算の会社が翌1年分を5%で消費税処理した場合、翌期の消費税申告の際に、平成26年4月から12月分については、一度5%での仕入対価の返還を受けたものとして処理した上で、改めて8%での消費税処理をすることとなります。
参照ホームページ
この他にも、いくつかの論点整理がなされています。ご参考頂ければと思います。
(国税庁HP)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/kaisei/201304.htm
ご意見・ご要望などありましたら、下記メールアドレスまでお寄せください。
なお、当記事は、私の私見であることをお断り申し上げます。
回答者 公認会計士 松尾 拓也
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