先日、銀行の方とお食事をする機会がありました。
公認会計士業、銀行業それぞれの立場から、企業の見方や業界の行く末など、非常に興味深い話のやり取りをさせて頂きました。
その中で、 「どのような会社が生き残るのか」という話題で、意見交換をさせて頂いておりましたが、その方が一言おっしゃった言葉に、大変共感を覚えました。
「在庫の整理・整頓ができていない会社は、生き残れない」
銀行員の方々は、一見、会社の決算書や経営者の事業計画あるいは担保となる不動産の価値などを見て、融資判断をしているものと思っていましたが、核心はそうではありませんでした。
「融資したお金が回収できるかどうか。つまり、その企業に借入金を返す力(能力)があるかどうかですよ。」
そこで、最初に見るのが、会社の在庫が整理・整頓されているかどうかということだそうです。在庫は、企業利益の源泉そのものですから、そこが整理されていなければ、自社がどれだけ儲けているかなど、正確にわかるはずもないということです。
そのようなことで、今回は、在庫管理を少しひも解いてみます。
現金の場合は、見た目の価値の増減もなく、そもそも「大切なおカネ」という固定観念がありますので、比較的、丁寧に管理されます。しかし、在庫となると、その意識が薄れることがあるようです。在庫がホコリまみれだったり、段ボール箱を山積みにして、その箱が歪んでいたりしませんか。
商品の質が悪ければ、その企業は、顧客から評価を受けることは難しいでしょう。
また、在庫として置いている間は、仕入代の回収ができていません。在庫が無駄に増えることは、企業の資金繰りを圧迫します。
また、在庫は、粗利を生み出す資産です。どれだけの量をいくらで仕入れ、いくらで売り上げたのかを正確に記録できなければ、その企業が儲かっているかどうかが正しく把握できません。
さらに、在庫は、消費期限の存在や商品の劣化や旧式化など、その価値は時間とともに減価していきます。価値が下がってしまった場合は、通常の販売方法では、売り物にならない可能性があります。
このように、在庫は、企業の価値や利益を生み出す基となる最も需要な資産です。在庫管理の第1歩として、まず、整理・整頓ができていなければなりません。
「棚割り−整理・整頓」
■商品区分(カテゴリー)ごとに、置き場を決める
■原則として、同じ在庫は、1ヶ所におく(点在させない)
■先に仕入れたものを先に払いだせるように配置する
■正常品置き場と不良品置き場を分ける
■未処理の在庫は、棚に置かない
(悪い例)
・在庫が点在しており、現場の担当者に聞かないと所在がわからない。
・同じ商品が、別の場所にあるのに、所在を知らないので、余計に仕入れてしまう。
・置き場の奥の方の在庫は、古いものになるので、そこは触らずに、新しいものを別に仕入れる
・不良品が置き場に混ざっていることに気付かずに、不良品を品出ししてしまった。
・返品在庫を返品処理する前に、品出ししてしまう。
次に、受払に対する管理をしっかりしなければなりません。
「受払管理―業務フロー」
■入荷処理
:納品書と現品を突合せ、入荷処理を行い、納品書を保管する。
■払出処理
:出荷指示書と現品を突合せ、出荷時に納品受領書を入手し、出荷処理を行い、納品受領書を保管する。
■売上返品処理
:返品伝票と現品を突合せ、返品処理を行い、返品伝票を保管する。返品在庫は、良品と不良品とに分け、仕入返品のきかない不良品は、評価損又は廃棄処理を行う。
■システム整備
:入出荷処理のボリュームにあったシステム導入を行う。システム入力は、在庫管理担当者が行い、営業担当者が直接入力できない仕組みとする。
回答者 公認会計士 松尾 拓也
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