リスク法務実務研究会は、弁護士、税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、弁理士、ファイナンシャルプランナー、保険代理店等の各種専門家によって構成する任意団体です。

　こんにちは、今回は、株式上場のお話しをしてみます。 　「新規株式公開」あるいは「新規上場」などと言われます。つまりは、上場企業になることを目指す企業のひとつの到達点です。

私がこれまで、触れてきたお話しの多くは、基本的に上場企業の姿をイメージして描いております。 ベンチマーク（比較対象）として、中小企業がどこまでそこに近づけるのか、あるいは、近づけないのか。もちろん、費用便益を考えれば、そこまでする必要はないことも多々あろうかと思います（例え、大企業であっても、大きな不正事件を起こしますしね。。。）。

　それでは、経営者が、株式上場を目指す動機は、どのようなことでしょうか。

　株式を公開する。例えば、これまで、親族や従業員で持ってきた株式について、新たに世間一般の投資家に、出資参加を募ります。企業にまとまった自己資金が入り、この資金を企業活動に投資できるわけです。 　一般的に言われるのが、「自己資金の調達」です。借入金と違い、自己資金ですから、元本を返す必要はありません。企業が儲かったときは、利息を払わない代わりに、配当を配ります。

　次に、よく聞かれるのが、「宣伝効果」です。「弊社は、上場企業です。」という言葉が、周りのどれだけのインパクトを与え得るのかということです。 　お客様や銀行に対しての信用度がぐんと上がることでしょう。 　従業員も、上場企業に勤めているという安心感とまた自負や誇りも醸成することと思います。 　新卒採用についても、優秀な人材が集まりやすくなると言われています。

　それから「相続対策」といったことも言われます。非上場企業の株主（＝経営者）は、経営を続ける限り、自社の株式を人に渡すことは、なかなかできません。企業が儲かれば、 自社株の評価額は上がり続けます。そのような中で、ご子息に経営を渡す際に株式も渡すことになりますので、相続に限らず多額の税金が発生することになります。 　株式を公開すれば、自社の株式は誰でも売買できることになりますので、自社の株式を現金化することができます。したがって、相続などに関わる納税資金を確保することができるということです。

　一般にそのようなことが、株式公開を目指すきっかけと言われております。

　先日、まだまだ小さな会社ですが、株式公開を目指されているという方のお話しを聞いてきました。

　「当社の技術をこれからの世の中の役に立てたい。」抽象的な表現ですが、そのようなことが、最初のきっかけのようでした。ただ、その会社は、まだまだ上場なんて言えるほどの経営成績ではありません。 　それでも、「３年後に上場をしたいのです」とその方はおっしゃいます。 　では、それまでの３年間の計画をお聞かせください。とお尋ねしましたところ、

　「来年は、販路を開拓いたします。」 　「再来年は、当社の技術を量産化できる体制を築きます。」

　ここまでは、自助努力で持っていく世界です。まだ、上場前のお話しです。 　それでは、３年後に上場を果たして、どうされるのですか？

　「日本の技術は、大変信頼性が高いのです。」 　「上場時に募集して集めた資金で、この技術を海外に展開したいのです。」

　その会社は、まだ、製品の量産もできない段階ですが、既に、海外へ出向き、会社の技術をプレゼンテーションし、大変な評価を得ているそうです。

　お話しを伺っていて、ふと、思いました。一般的に言われる上場を目指す３つの動機に、ほとんど引っかかっていないのです。ただ、３年後に目指すその会社の世界に向けて、具体的な行動をとられているわけです。

　 　私は、思いました。「きっとこの会社は、上場するはずだ。」