財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成28年9月号》
財務会計の散歩道−スキーム物語り(回答)

【株式移転:新会社設立、当事会社をその子会社とするスキーム】
 一、当事会社 A 社、B 社間にて、 「株式移転」に関する契約を締結します。
 一、A 社と B 社は、共同して新会社「旅姿.com」を新設し、同時に、A 社並びに B 社の株式をすべて「旅姿.com」へ移転します。
 一、A 社及び B 社の株主は、その対価として、 「旅姿.com」の株式を移転する株式と等価の価値で引受けます。
 そうしますと、 「旅姿.com」の下に、A 社と B 社が 100%子会社としてぶら下がり、それぞれの株主は、 「旅姿.com」の株主として存在することになります。

旅姿

旅姿

 (株式移転のメリット)
 ・ 当事会社それぞれの株主の金銭のやり取りが不要
 ・ 一定の条件を満たせば、株主は、株式の譲渡所得が生じない

 今回、A 社が提案した株式移転のスキームは、B 社にとっては好ましいものではありませんでした。
 その理由のひとつは、A 社と B 社の規模と旅姿.com の持株比率の問題です。
 A 社は B 社と比較して、収益面に関しても、純資産額に関しても倍以上の規模を誇る会社でした。株式移転では、完全子会社となる A 社・B 社の企業価値に応じて、それぞれの株主に、旅姿.com の株式を発行することになります。
 A 社の方が企業価値が高いということになれば、A 社は旅姿.com の株式の過半を所有することになります。また、企業価値に倍以上の差があれば、B 社の持株比率(議決権比率)は、3 分の 1 未満となる可能性が高く、その場合、旅姿.com の株主総会議案に対して、一切の拒否権をもてないということになります。

 そこで、A 社は、取締役の選任、定款変更や重要な財産の処分、組織変更など重要な議案に対する拒否権を B 社株式に付与するとする株主間協定を結ぶ提案をしました。
 しかし、B 社の回答は NO でした。
 B 社は、旅姿事業の他にも、事業を営んでいて、その別事業を事業統合の対象にはできないということでした。
 また、今回のスキームでは、株式の譲渡所得課税が生じないケースには該当しない可能性が高く、株主に高額の所得税が生ずるとうことも理由のひとつとされていました。

 A 社の社長は、それでも旅姿事業への熱が冷めない様子で、B 社の意向をくみ取るような形で、どうにか旅姿事業を軌道に乗せることができないかと考えています。
 ・B 社の旅姿事業を A 社の販売網を活かして、大事業に育てる
 ・ 「旅姿.com」という独立した会社形態で、確固たるブランドを構築する

 A 社からスキームの再提案をすることになりましたが、 どのような提案を持ち込むのがよいでしょうか。
 ということで、また、次回検討を進めたいと思います。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
如水グループ まつお会計事務所
公認会計士 松尾 拓也
福岡市中央区赤坂 1 丁目 12 番 15 号 福岡読売ビル 9 階 如水グループ内
TEL092-713-4876 FAX092-761-1011
HP: http://smaken.jp/user/usc_to.cgi?up_c1=43440
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
※当記事は、著者の私見であることをお断り申し上げます。
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