財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成28年11月号》
財務会計の散歩道−スキーム物語り(再提案議事録)

今回は、A 社から B 社への再提案の打合せの内容です。

T.旅姿事業連携構想の目的
 B 社は、 「旅姿」に関する高い技術開発能力と権利を有しています。現在その技術を認知・活用しているユーザーは、一部の市場に限られ、専門商社を通して、限られた範囲で流通している。
 一方、 A 社は、 汎用的なサービスの取扱いであるが、 全国的な販売網を有しており、 また、マーケティングやプロモーションなどの販売戦略のノウハウを持っている。
 B 社の技術を A 社が流通させるという通常の取引関係ではなく、B 社と A 社が共に、経営参画することにより、販売地域の拡大、新たなユーザー層の開拓が期待できる。
 また、旅姿の市場のトップシェアを先んじることで、利益率の高い事業展開が期待できるが、そのためには、 「旅姿」に対する確固たるブランド構築が欠かせない。
 これらの目的のため、
 ・A 社と B 社の経営参画
 ・ 「旅姿.com」の屋号又は商号による事業展開を提案するものである。
 (会議録)上記に関し、A 社、B 社の両首脳は、基本的に合意した。

U.目的達成の要件
(1)当初の株式移転により、A 社、B 社を「旅姿.com」の完全子会社とする案に対する問題点
 ・ 「旅姿.com」の支配権が A 社株主に偏ってしまい B 社株主の賛同をえられない
 ・B 社は、旅姿事業以外の事業については、共同経営するつもりはない
 ・株主に、譲渡所得課税が生じてしまう
(2) 「旅姿.com」を共同支配するには
 ・A 社株主の支配権は偏ってしまうが、実質的に支配しないとの「株主間協定」を結ぶのはどうか
 ・ (B 社株主から)民法上の契約ではあるが、会社法上、株主としての権利を持っている訳ではないので、賛同できないとの意見
 ・結果として、あくまで50対50の出資を原則とすることで合意した。
(3)旅姿事業の分離について
 ・B 社の他事業を B 社株主に残すため、旅姿事業を分離する必要がある
 ・旅姿事業には、B 社と開発部長が特許権を持っており、また、B 社は国からの製造許認可を受けている。したがって、B 社から旅姿事業を切り離すことには、相当の手間がかかる
 ・B 社の他事業を分離させることで合意した。
(4)株主の課税負担について
 ・B 社の他事業の分離により、B 社株主に課税が生じる可能性がある
 ・ (B 社株主から)事業統合自体に対価は要求しないが、課税負担が生じるのは困る
 ・結果として、B 社株主に生じる課税負担相当額を A 社が負担することで合意した。

V.基本的スキームの検討
(1)B 社から他事業を分離させる
 ・新設分割又は事業譲渡(税金コスト、事務の煩雑さを踏まえて検討)
(2)旅姿事業の統合
 ・技術開発と販売・プロモーションの両社の事業形態や人事制度を踏まえると、合併ではなく、 「旅姿.com」を持株会社としたホールディングス形態が望ましいのではないか
 ・統合に当たり、A 社株主と B 社株主の議決権は、原則50対50となるか
 ・株主に生ずる課税負担への対応策はあるか
 ・ (原案として)株式移転によるホールディングス形態の事業統合とすること。A社株主と B 社株主には同数の議決権株式を発行し、それを超える A 社株主の持分については、議決権のない優先株式を発行すること。株主に課税負担が生ずる場合は、相当額の金銭対価を支払うことで合意した。

W.その他
(1)上記の合意内容を前提として、両社はデューデリジェンスを実施し、合意事項が実行できるか、また、具体的条件を協議する
(2)両社ともに、協議に参加する役員・社員・専門家を指定し、その他には情報を漏らさないこととする
(3)協議期間の期限を6ヶ月とし、その間は、他の当事者の関与がないようお互いの独占的地位を保証する
以上が、打合せの内容です。これに基づき、 「事業統合に関する基本合意書」が締結され具体的な交渉を進める運びとなったようです。

 筆者も前置きなしに、ストーリーを組んでおります。来月、打合せの資料をお見せしたいと思います。それでは。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
如水グループ まつお会計事務所
公認会計士 松尾 拓也
福岡市中央区赤坂 1 丁目 12 番 15 号 福岡読売ビル 9 階 如水グループ内
TEL092-713-4876 FAX092-761-1011
HP: http://smaken.jp/user/usc_to.cgi?up_c1=43440
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
※当記事は、著者の私見であることをお断り申し上げます。
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