財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成29年2月号》
中小企業の資金調達(運転資金)

 「事業に投下する資金をどこから調達しますか?」
 開業時であれば、まずは、自己資金。つまり、経営者のポケットマネーです。
 しかし、個人のポケットマネーでは、出せる金額は限られています。
 店舗展開や従業員雇用あるいは在庫仕入を考えると、初期段階でも、自己資金では賄えないことがあります。その場合は、銀行から資金を借り入れることが多いかと思います。

 「いくら借りるべきですか?」
 借入金には、大きく3つの区分があるように思います。 「運転資金」 、 「設備資金」 、 「 (赤字)補てん資金」です。
 「運転資金」は、仕入代金や人件費・経費の支払に充てるための資金です。掛売がメインの企業では、売掛金の入金の前に、仕入代や経費を支払うことになり、その間、資金がショートします。したがって、売掛金が入金されるまでの資金を借入れ、売掛金で返済をするというものです。返済した結果、利益額が会社に残ることになります。

 事例を見てみましょう。
 ・売掛金は、売上の2ヶ月後入金
 ・仕入代は、仕入の翌月支払
 ・人件費・経費は、当月支払

損益

 2月に賞与を20支払いましたが、業績は至って順調で、5ヶ月で 130 の利益を獲得しました。
 これに対して、資金繰りは、どうでしょう。

資金繰り

 1月、2月は、支払のみで、会社に資金が残りません。これを補うために、1月に90、2月に20借入を行いました。2月の借入は賞与資金です。
 入金が始まるのは、3月からです。資金が十分にたまった6月、7月にかけて、借入金を返済しています。この結果、通算では、利益額 130 が会社に残ることになります。  借入金は、以下の2本
 借入@ 運転資金 期間5ヶ月 90
 借入A 運転資金 期間5ヶ月 20

 一般に、借入の実績の少ない会社では、銀行に借入を申し込んでから、融資が下りるまで1ヶ月から2ヶ月程度かかります。したがって、会社のビジネスモデルや事業計画をもとに、事業を始める前に申し込んでおかなければいけません。
 また、担保がない制度融資の場合は、借入額の2分の1程度の自己資金が必要となります。つまり、事業始める前に、55程度の自己資金を持っておく必要があります。

 事例では、5ヶ月分の取引しか記載していませんが、実際の商売は、これが際限なく続きます。取引量が多くなる時期は、支払が先に多くなります。これらを見通して、借入の計画を立てる必要があります。

 また、運転資金借入の種類として、約定・手形借入と当座借越の2種類の借入方法があります。前者は、都度、返済期間を定めて借入を行う方法です。契約を締結するのか支払手形を発行するのかで、約定借入と手形借入に分かれます。後者は、借入限度額を銀行と約束し、その枠内であれば、いつでも借入・返済が行えるものです。
 これも、事業計画上の必要資金とそれぞれの方法の借入条件を考慮して、経営に有利な選択をすることが大切です。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
如水監査法人・如水税理士法人
如水コンサルティング
パートナー
公認会計士・税理士 松尾 拓也
福岡市中央区赤坂 1 丁目 12 番 15 号 福岡読売ビル 9 階 如水グループ内
TEL092-713-4876 FAX092-761-1011
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
※当記事は、著者の私見であることをお断り申し上げます。
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