財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成29年4月号》
中小企業の資金調達(設備資金)

 運転資金と並んで、企業経営に必要となる資金として、「設備資金」が挙げられます。金額が大きくなるため、企業の自己資金だけでは賄えず、銀行借入を活用するケースが多いかと思います。今回も事例を見ながら進めていきます。
 【飲食業の新規出店のケース】
 ある企業が、既存店舗物件を居抜料2百万円、敷金5百万円を支払い賃貸し、内装費3百万円をかけて、新規出店をします。自己資金が3百万円しかありませんので、7百万円を銀行から借りる必要があります。
 また、その新店舗の年間損益計画は以下のとおりです。

年間損益計画

 設備資金を検討する場合の発想は単純です。
 「元金と利息を支払える範囲で、借入を行うこと」
 元利の支払いができなくなれば、資金ショートするわけですから、至極当然のことですが、実務の世界では、そこをよく検討せず、銀行が貸してくれるからといって、安易に借入を行っていることが多くみられるように思います。
 次に、元利払いが可能な額を計算するに当たって、重要となるのは、次のポイントです。  「キャッシュ・ベースで検討すること」
 (減価償却前の利益を利用する)
 (税金の支払を考慮する)
 上記の損益計画で見ると、年間支払可能額は、
 (5)償却前利益 2,200 − (8)税金 360 = 1,840 千円 となります。
 これを元に、4年で返済するケースと5年で返済するケースを検討します。
 なお、利率3%、元利均等返済と想定します。

返済シュミレーション

 (元金返済、利息支払は、excel の PPMT、IPMT 関数を使って計算しています)
 上記の表から見ますと、5年以上の長期で資金を調達しないと資金がショートすることがわかります。
 実務では、その他にも事業があったり、資金があったり、あるいは必要額以上の借入を起こしたりすることがあります。そうしますと、上記の4年返済のケースにおいても、資金が回るようなことが生じます。しかし、この新規出店した事業のみを切り出すと資金ショートしている事実には変わりがなく、他の資金を流用しているに過ぎないとうことを理解頂ければと思います。
 設備資金調達の基本は、以上ですが、実務はこんなに単純ではありません。この他に検討すべきポイントがいくつかありますので、ご紹介して今回は終わりたいと思います。
 ・損益計画の変動要因
 ・事業撤退時に係るキャッシュ・フロー
 ・借入条件
 ・利率
 ・返済方法(元利均等か元金均等か)
 ・担保・保証の有無
 ・据え置き期間

回答者 公認会計士 松尾 拓也
如水監査法人・如水税理士法人
如水コンサルティング
パートナー
公認会計士・税理士 松尾 拓也
福岡市中央区赤坂 1 丁目 12 番 15 号 福岡読売ビル 9 階 如水グループ内
TEL092-713-4876 FAX092-761-1011
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
※当記事は、著者の私見であることをお断り申し上げます。
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