財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成29年11月号》
財務会計の散歩道−棚卸資産(実地棚卸のプロセス)

 実地棚卸を正確に実施することが、棚卸資産管理の第1歩といえます。
 今回から、実地棚卸を正確に行うためのプロセスを述べたいと思います。

 実施棚卸のフレームワーク
 実施棚卸を行う際に検討しておくべきフレームワークは、以下のとおりです。
 (1)組織・規程の整備
 (2)事前準備
 (3)棚卸の実施
 (4)棚卸結果の集計
 (5)棚卸結果の評価
 (6)日時管理

 項目ごとに、論点整理をします。

 (1)組織・規程の整備
 実地棚卸は、日常的に行われるルーティンではありません。月次、半期、年度など、定期的に行われる業務です。また、実地棚卸は、原則として在庫移動を止めた上で、全社一斉に実施する作業で、その集計・分析も全社として対応すべき業務になります。したがって、日常の業務分担とは異なり、実地棚卸のための組織整備を行い、これを社内に周知するため規程として整備する必要があります。

棚卸組織案

 棚卸組織図は、棚卸実施時の指揮命令系統の明確化、在庫管理責任の意識付けのために必要と考えられます。
 また、規程の整備として、以下の様に基本方針と具体的な作業指示書を作成します。

 ・実地棚卸要領  :実地棚卸に関する基本方針を定めたもの。
 必要に応じて改訂されるもの。
 ・実地棚卸指示書 :実際の棚卸に当たり、現場担当者に具体的なスケジュールや分担を定めるもの。毎回、作成されるもの。

   基本方針である「実地棚卸要領」では、一般的に以下のような項目が規定されます。これらの項目を具体的な作業指示に置き換えたものが「実地棚卸指示書」です。

 第1条 (目的)
 第2条 (実地棚卸日)
 第3条 (棚卸対象品)
 第4条 (組織)
 第5条 (役割分担)
 第6条 (事前準備)
 第7条 (棚卸原票の使用)
 第8条 (棚卸原票の記入方法)
 第9条 (棚卸原票の回収と集計手続き)
 第10条(棚卸書類の保管)

 実地棚卸をルール化することは、とても大切です。
 例えば、在庫は入っているけど、入荷処理が終わっていないものを棚卸でカウントしてしまうと、その分在庫が過大になります。その逆も然り、売上げた在庫の出荷処理をしないまま棚卸をすれば、その分在庫が過小となります。
 あるいは、在庫の整理をせずに、カウントしてしまうことで、カウントミスが多発し、実際の在庫数が把握できていないこともあります。
 そのようなことのないように、棚卸要領と指示書を全社員に周知し、正確に棚卸を実施できる体制を整備することが重要です。

 次回は、(2)事前準備について、記載いたします。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
如水監査法人・如水税理士法人
如水コンサルティング
パートナー
公認会計士・税理士 松尾 拓也
福岡市中央区赤坂 1 丁目 12 番 15 号 福岡読売ビル 9 階 如水グループ内
TEL092-713-4876 FAX092-761-1011
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
※当記事は、著者の私見であることをお断り申し上げます。
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