財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成30年1月号》
財務会計の散歩道−棚卸資産(実地棚卸の実施 )

 棚卸の事前準備により、正しいデータに基づいて棚卸ができる状況が整いました。早速、実数カウントを進める訳ですが、実数カウント自体が不正確では、その棚卸は意味を持たなくなってしまいます。今回は、棚卸の実施時に関する留意事項について述べたいと思います。

(1)カウントの順序と終了札
 実数カウントの洩れや重複を避けるために、実数カウントの順序をあらかじめ定めておきます。前回の事前準備の項で、レイアウトに従った現品整理について述べました。そのレイアウトに沿ったルールを設定します。
 レイアウトにある在庫置場に、「棚番号」を附番して、実施者がカウントする順序を矢印で示します。
(図1:レイアウト図)

レイアウト図
【エリアのカウント順序】
 各エリア担当者は、矢印に沿って、棚番号順にカウントを行ってください。
 そして、それぞれの各棚についても、カウントの順序を決めます。
 (図2:棚のカウント順序)
棚のカウント順序
【各棚のカウント順序】
  各棚は、必ず、左上から右向きにカウントしてください。
 一段が数え終わったら、次の下段の左から右向きにカウントしてください。
 各棚のカウントがすべて終わったら、各棚の右下に「棚卸済」のカードを添付してください。
 各棚ごとに、カウントが終わる都度、「棚卸済」と記載した色付きの用紙を添付することにより、見た目で、棚卸しの洩れ・重複がないことを確認することができます。

(2)ダブルカウント
 各担当者が正確に実数カウントできるよう、2人1組でカウントを行います。1名が現品をカウントし、もう一名が正確に数えているかを確認しながら棚卸表への記載を行います。お互いの牽制になることはもちろんですが、箱の出し入れや棚卸表の帳簿在庫数との差があった場合に再カウントを行う際など、2人で対応する方がはるかに効率的に行えます。

(3)棚卸表のコントロール
 せっかく担当者が正確に実数カウントを行っても、棚卸表がすべて回収されなければ意味がありません。
 前回も触れましたが、事前に連番を付した棚卸表を誰に配布して、そのすべてが回収できたかを棚卸責任者が確認できるようにします。

棚卸表のコントロール
 一例ですが、上記のような表を作成し、確実に棚卸結果が集計できるようにすることが大切です。

(4)立会検査  実地棚卸は、それぞれ分担で実施担当者に任せ、短時間で数えていくことになります。決められた棚卸ルールに従ってカウントしているか、各担当者が正確にカウントしているかなどを上長の立場の方が、立ち会って検査をします。企業の規模にもよりますが、立会検査をすることで、棚卸の精度はかなり高くなります。具体的な検査項目としては、以下のような事項が挙げられます。
  ・レイアウトの確認
  ・棚卸中の在庫移動(入集荷)がないことの確認
  ・抜き取り検査

 次回は、(3)棚卸の実施について、記載いたします。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
如水監査法人・如水税理士法人
如水コンサルティング
パートナー
公認会計士・税理士 松尾 拓也
福岡市中央区赤坂 1 丁目 12 番 15 号 福岡読売ビル 9 階 如水グループ内
TEL092-713-4876 FAX092-761-1011
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
※当記事は、著者の私見であることをお断り申し上げます。
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