今回は、棚卸の実数カウントが終わった後の作業について述べたいとおもいます。
(1)棚卸結果の集計と差異分析
実数カウントが終われば、棚卸表を洩れなく回収し、帳簿棚卸高(理論棚卸高)と実際棚卸高が一致するかを確かめます。差異がある場合は、帳簿棚卸高を実際棚卸高に修正をします。
ただ、数量の修正をするだけではなく、差異の生じた原因をきちっと分析することが大切です。
差異が生じる原因は、大きく3つあります。「伝票処理の誤り」、「実数カウントの誤り」、「在庫の減耗」です。
入荷・出荷の処理漏れ、返品処理漏れあるいは処理の重複など、伝票処理が誤っていれば当然、帳簿棚卸数と実際棚卸数には差異が生じます。この場合は、伝票処理自体を修正する必要があります。伝票処理の誤りをすべて発見することは、実務上は難しいものがあると思いますが、大きな差異が生じている在庫については、時間をかけてでも原因を分析するべきだと思います。
次に、実数カウント自体が誤っていることがあります。前回の散歩みちで、実数カウントの正確を期すための手法を紹介しましたが、それでも人のやる作業ですから、誤りは生じます。大きな棚卸洩れや重複がなかったか、品番を誤っていないかなどを検討します。同じ商品でも、サイズや入数が異なるものを違う品番で管理していますので、違う品番の欄に実数カウントを記載していないかなどを確認します。
3点目は、在庫の減耗です。在庫が無くなっているということですね。これは、伝票処理などの問題ではありませんのが、在庫管理システムの在庫高を直接修正するしかありません。
(2)棚卸結果の評価
実地棚卸の最後のプロセスになります。実数カウントをして、差異分析を行い、必要な修正処理を行う。それだけでは、組織的な棚卸としては不十分です。今後の業務改善につなげるため、実施した結果を評価することが大切です。
・棚卸高の報告
・重要な棚卸差異の内容と原因
・棚卸の実施状況についての報告
などが議題となります。
棚卸高の報告については、今回の棚卸高についての報告の他、在庫の滞留状況、期限切れや評価減の状況について、情報共有することも重要だと思います。また、在庫の回転率や在庫高の目標管理の状況についても議題とすることで、次月、次々月の在庫管理方針なども共有できます。
つぎに、棚卸差異の内容の報告になりますが、棚卸差異の内容や発生原因を共有するとともに、改善点を検討します。どこに差異が生じやすいのか、在庫の紛失などに不正要因がないかなど、情報を共有化することで、相互牽制や業務改善への意識の向上にもつながります。
また、実施棚卸の事前準備や棚卸の実施のプロセスが、会社の決めた規程やマニュアルのとおりに実施されたかどうかについても、棚卸の都度確認し、改善点があれば、次回から改善を促すようにします。
営業会議は、毎月行っている会社は多いと思いますが、このような実地棚卸の評価会議を行っている企業は、必ずしも多くないと思います。売上高、売上総利益(粗利)は、企業の規模や収益の最も大きな源泉だと思います。
売上総利益(粗利)を効率よく上げるには、増収を図るだけでなく、売上原価率を下げる努力が必要になります。そうしますと、在庫の管理強化は、必然のことだと言えます。
実地棚卸の評価会議は、営業会議に匹敵する重要な会議と位置付けられても、決しておかしくはありません。
回答者 公認会計士 松尾 拓也
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