財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成30年3月号》
財務会計の散歩道−棚卸資産 (日次管理)

 約半年にわたって、棚卸資産の管理上のリスクと実地棚卸を中心とした、棚卸資産の管理手法について記述してきました。
 今回が、最後の項になりますが、棚卸資産を適切に管理していくための日次の管理について述べていきたいと思います。

 受払管理と在庫移動の同期
 定期的な実地棚卸を厳格に実施しても、日ごろの在庫の受払管理が正確に実施されていなければ、棚卸差異の分析が正確に行うことが困難となり、折角の実地棚卸が意味をなさなくなる可能性もあります。
 在庫の受払管理を正確に行うために、まず必要となることは、受払記録を在庫移動の実態に合わせることです。当然のことのように聞こえますが、実務が意外とうまくいってないことがあるようです。
 主な業務ごとに、チェックポイントをまとめてみます。

【入荷処理】
 NO  業務フロー  チェックポイント 
 1納品書の受取在庫入荷毎に、納品書を受け取っているか。
(後日、まとめて入手していないか)
 2納品検品在庫入荷時に、納品書と現品を検品する手続をとっているか
 3入荷処理入荷処理は、納品書に基づいて行っているか
(発注書や請求書など、現品の動きをトレースして
いない書類に基づいて、入荷処理を行っていないか)
 4請求書の照合納品書に基づく入荷処理記録と請求書を都度突き合わしているか

【出荷処理】
 NO  業務フロー  チェックポイント 
 5出荷伝票
(納品受領書)
在庫出荷毎に、出荷伝票(納品受領書)を発行し、
受取先の受領印を取っているか。
 6出荷検品在庫出荷時に、出荷伝票と現品を検品する手続をとっているか
(納品受領書の入手で代替できる場合もある)
 7出荷処理出荷処理は、出荷伝票(納品受領書)に基づいて行っているか
 8請求書の照合納品書に基づく入荷処理記録と請求書を都度突き合わしているか

【移動処理】
 NO  業務フロー  チェックポイント 
 9移動伝票
(納品受領書)
在庫移動毎に、移動伝票を作成しているか。
10出荷検品・
移動処理
在庫移動(払出)時に、移動伝票と現品を検品する手続をとって
いるか。また、出荷部門は、移動伝票に基
づいて移動払出処理を行っているか。
11入荷検品・
移動処理
在庫移動(受入)時に、移動伝票と現品を検品する手続をとって
いるか。また、受入部門は、移動伝票に基
づいて移動受入処理を行っているか。
12積送中在庫
の把握
積送中(移動払出後、移動受入前)の在庫を「積送中在庫」として
把握することが可能か。

 主だった12項目のチェックポイントを記載しましたが、すべてクリアーしている企業は、相当管理レベルの高い企業と言えるでしょう。また、実務に落とし込むことを想定した場合に、かなり困難に感じる企業も多々あることと思います。
 たった12項目ですが、すべての要点を満たすには、相当の人的リソースとシステム投資が必要となることでしょう、
 現時点の当社で、どこまで対応ができているのか現状を把握し、すぐに改善できるポイントについては改選を行い、対応が困難なポイントについては、それに代わる対策を検討することが大切だと思います。

 日次の管理の精度が保てなければ、実地棚卸での棚卸差異の分析が煩雑となるため、棚卸差異分析に労力をかける必要が生ずると考えると良いと思います。
 在庫管理は、売上総利益に直接影響する重要な管理要点です。企業の現状に応じて、どこにリソースを集中させるかを戦略的に検討しておくことが肝要です。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
如水監査法人・如水税理士法人
如水コンサルティング
パートナー
公認会計士・税理士 松尾 拓也
福岡市中央区赤坂 1 丁目 12 番 15 号 福岡読売ビル 9 階 如水グループ内
TEL092-713-4876 FAX092-761-1011
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
※当記事は、著者の私見であることをお断り申し上げます。
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