財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成30年4月号》
事業承継−背景

 最近、公認会計士の業界では、「事業承継」というキーワードが、ひとつのテーマとなっています。日本公認会計士協会が、昨年10月に「事業承継は公認会計士にご相談ください」というリーフレットを公表しました。
(参考:http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/about/news/20171019ifu.html)

 税制の分野でも、経営承継円滑化法による事業承継税制(非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例)など、事業承継を想定した優遇措置がありますが、昨年の4月から相談窓口が、経済産業局から都道府県に変更されたり、今年の4月から適用要件が大幅に緩和されたり、要件緩和や地方への権限移譲が行われています。

 これは、会計・税務の分野に限って着目されているわけではなく、日本(特に地方の中小企業)において、事業承継を円滑に実施しなければいけなくなる環境が目前にせまっている状況があり、制度上の担保が様々な分野で整備されているということなんです。

「事業承継ガイドライン」
 中小企業庁から平成18年に発表された「事業承継ガイドライン」が、平成28年12月に、大幅に内容を見直した上で公表されました。ここでは、国が事業承継を施策のテーマとした背景がわかりやすく取りまとめられていますので、いくつか紹介します。

「経営者の高齢化」
 背景のひとつとして、経営者の高齢化(団塊世代の引退)が挙げられています。

企業数の推移
 上表は、企業数の推移です。1990年から2014年までに、100万者の企業数が減少しています。最近5年間でも、約1割の40万者が減少しています。中でも、小規模企業者の減少が大変目立ちます。
平均引退年齢
 また、上記の表は、中小企業の経営者の年齢分布と平均引退年齢を示しています。この表からは、「中小企業の経営者は概ね67〜70歳前後で引退をすること」と、「中小企業の経営者の最も多い年齢層が65歳を超えていること」がわかります。
 つまり、「今後5年から10年程度にわたって、中小企業の経営者の引退がピークを迎える」ということが読み取れるわけです。

 中小企業の経営は、大企業と異なり、経営手腕や企業の強みがヒトに付いているケースが多く、単に事業場と従業員を第三者に承継できないケースが多々存在すると思います。一方で、経営者の引退の時期が目前にあるなかで、事業を継続・発展させることができるかという問題です。企業者数の減少の推移を見ると、ほっておけば日本(特に地方)は、経済規模が大幅に縮小したり、技術やノウハウが喪失したりするリスクがあり、大きな社会的な問題としてとらえられています。
 次回以降、中小企業庁や日本公認会計士協会の公表物を中心に、内容を掘り下げ、事業承継を巡る中小企業の問題点や実務的な課題を検討していきたいと思います。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
如水監査法人・如水税理士法人
如水コンサルティング
パートナー
公認会計士・税理士 松尾 拓也
福岡市中央区赤坂 1 丁目 12 番 15 号 福岡読売ビル 9 階 如水グループ内
TEL092-713-4876 FAX092-761-1011
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
※当記事は、著者の私見であることをお断り申し上げます。
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