財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成31年1月号》
「財務会計の散歩みち」

 これまで、77回にわたって「そこが知りたいシリーズ」の執筆をさせて頂きました。都合により、今回で執筆を終了させて頂くこととなりました。最後は、「財務会計の散歩みち」というタイトルをテーマにお話させてい頂きます。
 企業経営を行う限り、「財務会計」を避けて通ることはできません。少なくとも、税務申告のために決算をしなければいけません。事業規模が大きくなってくれば、収入と費用のバランスを考慮して、収支が黒字になるよう損益管理を行う必要が生じます。また、大きな設備投資なども含め、金融機関から資金調達をすれば、当然に元本の返済をしなければならず、そうなると、損益の管理のみでなく、資金繰りの管理を行う必要が生じます。
 「決算」、「損益管理」、「資金管理」は、経営者が意識すべき最低限の会計マターだと思います。これができないのであれば、その企業はいつ倒産の危機に陥ってもおかしくないと言えます。
 次のステップとして、事業目的や企業活動と会計をリンクさせて、経営管理を目的とした会計を目指すこととなります。会計は、すべて数量と単価で表すことができます。例えば新規事業を立ち上げるため、利益計画を作ろうと思えば、売上、仕入、経費ともに、数量と単価の予測を立てて、積み上げることになります。一方、日常の会計管理の中で、すべての科目を数量と単価に分けて分析をすることは、非常に煩雑で実務的とは言えないのではないでしょうか。そこで、分析をもう少し大くくりにします。部門別分析と勘定分析です。
 部門別の損益管理を行えば、収支が、どこで発生しているのかが把握できますので、どこを改善すれば良いのかを知る指標となります。
 勘定科目を細分化して、補助科目を設定して、補助科目ごとに整理をすれば、収支の発生原因を理解するための指標となります。
 そして、売上高や仕入高など、企業経営にとって最もキーとなる科目については、数量と単価の分析を行う必要があろうかと思います(ただし、会計システムのみでは管理が難しい)。
 おそらく、第2ステップまで意識して、管理体制を整備すれば、経営効率の向上が図れるように思います。
 税務申告だけを目標として、会計を整理すると、そこまでの分析はできず、税務申告書の作成に必要となる情報しか集計されていないような試算表が出来上がります。これでは、経営判断の役に立ちません。

 また、第2ステップの会計を整備するに当たって、分析の着眼点が3つあるように思います。「タイミング」、「ベンチマーク」、「適正性」です。
 タイミングとは、集計をどれくらいの頻度で実施するかということです。上場企業は、少なくとも月次で分析を行い、取締役会で報告することが求められます。中小企業にとって、どこまで必要かを決めておくべきと思います。経営に言い換えると、役員会や経営会議をどれだけの頻度で実施すべきかという問題です。
 ベンチマークとは、分析結果を何と比較すべきかという視点です。もっともポピュラーなのは、前年同期比較です。その企業自身の変化が金額に反映されます。この他、予算比較、同業他社比較などがあります。目標管理を行うには、予算制度を設定して、予算比較を行う必要があることはいうまでもありません。
 適正性とは、報告される会計数値が適正であるかどうかです。会計報告があがっても、誤った数値では正しい経営判断ができません。誤った会計報告が行われる原因が、いくつか考えられます。ひとつはミスです。数値入力や集計について再チェックや検認を行っていないとミスは防げません。つぎに、不正です。故意に異なる数値を報告することです。売上の水増しや資産の横領・着服など。厳格なチェック体制を敷くこともありますが、不正を許さない組織風土をつくることがもっとも効果的な対策だと思います。経営者自身が利益を良く見せたがったり、あるいは、過剰な税金対策をしたりするような企業では、不正は防げないように思います。

 管理の精度を上げるためコストと管理会計数値を利用した事業力強化による収益力アップとその企業のバランスを考慮しながら、管理レベルが決まることと思いますが、最初から、上記のようなスタンスをもって検討を進めることが、企業の財務基盤構築の早道だと思います。
 抜け道・裏道から発想する経営は、長続きしないなあ。というのが、私の散歩道の風景です。
 6年と少し、お付き合いを頂きありがとうございました。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
如水監査法人・如水税理士法人
如水コンサルティング
パートナー
公認会計士・税理士 松尾 拓也
福岡市中央区赤坂 1 丁目 12 番 15 号 福岡読売ビル 9 階 如水グループ内
TEL092-713-4876 FAX092-761-1011
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
※当記事は、著者の私見であることをお断り申し上げます。
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